豚コレラの感染が止まらない。
2019年9月時点では、特に愛知県と岐阜県で多くの感染が見つかっている。
感染豚が出た場合、その養豚場はすべての豚を殺処分にする。
大きい養豚場だと一度に数千頭を土に埋めることになる。
岐阜県は12万頭いた豚が、現時点で5万頭しかいなくなった。
つまり、7万頭が殺処分になった。半端な数ではない。
まだ鹿児島や北関東で感染が出ていないので救われている。
鹿児島には130万頭の豚がいる。
もしここに飛び火すると大問題だ。
豚肉の相場がひっくり返るほど大きく変動するかもしれない。
感染した豚の肉を食べても人体には影響がない。
なのにすべてを殺処分にしなければならないのはなぜか。
この点について、天狗中田産業の社長であり個人的にも親しくさせていただいている中田二郎さんに教わった。
簡単に言えば、感染肉を放っておくとそれが媒介して際限なく感染が広がり、途方もない豚が死滅する恐れがある。
人は食べ残す。
もし人が感染肉を食べ、半分を食べ残して捨てるとする。
それをカラスなど野生動物が食べる。
ウイルスはカラスに無害かもしれないが、豚コレラウイルスはカラスの活動範囲内にばらまかれる。
野生動物が媒介してウイルスは全国に感染し、健康だった養豚場をやがて侵す。
これを防ぐために、感染豚が発見されたら即時にその囲みの中すべては封印処置をとらなければならない。広域に流通させてはいけないのだ。
ワクチンを豚に打って予防しようという動きも盛んである。
しかし、エライザ法という検査は、ウイルスに対する免疫ができたかどうかを図るもので、ウイルスを持っている豚なのかまったくウイルスに触れていない豚なのかを識別することはできないらしい。
だから、今できることはワクチンを打った豚と打たない豚の区分けをしておこう、という程度である。
本当は、すべての豚にワクチンを打つことに統一した方がその後の管理はやりやすい。
しかし、経費もかかるので大変難しい問題だ。
豚コレラが収束するには時間がかかるだろう、というのが中田さんの見解だった。
レストラン「ぶどうの木」の料理長・米田岳人さんはジビエ料理の振興に大変な尽力をされている。が、この豚コレラ問題のせいで、ジビエ料理を注文するお客さんは最近めっきり減ったそうだ。
食べても大丈夫と言われても、「コレラ」にかかった肉だもの。やっぱり食べる気は失せる。
消費者心理としては当然だ。
だから、今はせめて、豚コレラについて正しい知識を深めるような活動がもっとあるべきだ。
風評被害をできるだけ起こさないためにも。