今朝、金沢農業大学校の生徒さん5名が市場研修にいらっしゃいました。
1時間程度、わたしが市場の現場(卸売場)をご案内し、卸売市場の仕組みであるとか、野菜の出荷方法であるとか、出荷にあたって注意してほしいことを説明させていただきました。
言わばこの方々は農家の卵です。
今は勉強中の身ですが、卒業後は独り立ちされ、作った青果物を市場に出してほしい。
農業は山あり谷ありで大変でしょうが、ああこの道に進んで良かったなあと思えるように大きくなってほしいと心から願っています。
「金沢農業大学校」は、金沢の農業発展を目的に、新しく就農しようとする人たちを募集し、野菜の栽培技術を教える研修機関です。
募集対象は就農できる歳から65歳まで、と幅広いです。
同じような研修機関として、石川県には「石川耕稼塾(こうかじゅく)」があります。
金沢農業大学は、金沢市が開校し指導していますが、こういう名の校舎があるわけではありません。
金沢市が運営する農業研究所「金沢市農業センター」が実習の場です。
生徒は毎年募集があり、2年間の研修期間が設けられ栽培技術を習得します。
学費はなんと無料です。
卒業後は、独立して農業をやりたければ、農業センターが農地を斡旋してくれます。
就農するまでは結構至れり尽くせりの素晴らしい仕組みです。
ただ現実はどうでしょうか。
卒業まではみなさん比較的順調なんですが、卒業後に農業従事者として定着するまでの壁がかなり高いようです。
特に独立して「○○農園」なんて感じで一国一城の主となってやっていくのは大変です。
いきなり独立しても軌道に乗るにはかなりの忍耐・資金・年月が必要なので、まずはどこか既存の農業法人に入る人の方が多いかもしれません。
いずれにせよ、この大学を卒業する方々は毎年平均10人ぐらいいて、その7割がその後も担い手として農業を続けていかれるそうです。
石川県、金沢市の農業の担い手は年々減少傾向にあります。
ですから、この人たちはとてもとても大切な人材なのです。
だから、市場研修でお越しになる時たるや、私は無茶苦茶真剣になります。
1・なんとか、農業を続けてもらって、一人前になっていただくこと。 2・ちゃんと市場流通を理解してもらい、「卸売市場に出荷しよう」という気になってもらうこと!
この2点が重要事項です。
農業を新しく志す人には、根拠なく「市場には出さない」と思っている人が結構多いのです。
これは本当に困りものです。
テレビでスポットが当たる農業者の典型的スタイルは、こだわりの栽培方法を持ち、高級レストランなどと直接契約を交わし、いつもまたたく間に完売という、ものすごくカッコいいイメージがあります。
こういう人たちは俗に「スーパー農家」と言われます。
確かにこういう人は稀にいて、卓越した技術が持ち、経営的センスも兼ね備えています。
そして、どうもその対極にあるのが卸売市場に出荷する農協や個人農業者で、そこにはあまりいいイメージがついてこないようなのです。
このマイナスイメージのせいで市場流通を頭から否定する農業者が多数輩出される現実があります。
何回も言います。
これは根拠のないことです。
市場流通を軸にしている農業者の中にも、栽培技術や考え方の素晴らしい人はたくさんいます。
新しく就農を志す人びとからも、そういう人材が一人でも多く出てきてほしい。
そういう思いで農業大学の生徒さんには市場流通を一所懸命アピールさせていただいてます。