まずはじめに。
私は日本のお笑い界には心から畏敬の念を抱いています。
(今年はお笑い界には不祥事が数々ありましたが、これは横においておきます)
外国のことはよく知りませんが、こんなにピュアでシビアな世界って他にあるんだろうかと思います。
常に熾烈な競争にさらされ、芸を磨き、売れればバラエティ番組で四六時中カミソリのようなアドリブを連発して初めて生き残っていける過酷な世界です。
はっきり言って、役者の世界よりも日々の勝負の度合いがまるで違います。
そのお笑い界に身を投じた数千組もの芸人達が、頂点を目指して覇を競う最高峰の舞台がこの「M-1」です。
リアルな闘いの場に出ていくわけですからその勇気にも頭が下がります。
今年のM-1はミルクボーイが「コーンフレーク」ネタが大爆発し、初の決勝進出にして初優勝を飾りました。
たしかにこのネタは素晴らしかった。大いに笑いました。
しかし、ここからは注文をつけさせてもらいます。
優勝決定戦(二本目)のミルクボーイのネタ、これは決勝一回戦(一本目)と基本的に同じネタです。
「コーフレーク」が「もなか」に変わっただけ。
これ、ネタを二本やったとは言えんでしょう。
思い出したのは「キングオブコント2017」で大ブレークした「にゃんこスター」です。
あの縄跳びネタも二本目はフラフープに変えただけで基本的には同一ネタでした。
「キングオブコント2019」優勝の「どぶろっく」もそう。
神様が願いをかなえてくれる下ネタミュージカルコントは1本目も2本目もまったく同じでした。
どれも二本をつなげて、時間を倍にすれば一本のネタみたいなものです。
つまり、頑張って中身の違う二本のネタを用意するより、とにかく爆発力のあるネタを一本用意して、勝ち抜けばそれをちょっと焼き直しして決定戦に臨む、という悪しきセオリーがまかり通ったように感じます。
プロなら二本の違う勝負ネタを用意する気概を見せてほしい。
そして、一本目よりも二本目の方が面白かった!満場一致で認めさせてこそのチャンピオンでしょう。
その点、和牛もだめです。
敗者復活戦のネタと決勝一回戦のネタが同じとは。
どちらも連続でON AIRされることを知っていたんでしょうか。
これはルール的にもNGにすべきです。
敗者復活してまで勝ち上がり、ついに優勝まで辿りつくことの醍醐味は、3本もの別ネタすべてで爆笑を取ってこそ価値あるものであることは自明でしょう!
敗者復活はかくも過酷なハンデを背負うからこそ、這い上がるドラマに感動が生まれるのです。
今回のM-1で一番おもしろかったネタはミルクボーイの「コーンフレーク」であることに異論はありません。
が、上記の理由により、私の中では、優勝決定戦できちんと別ネタを用意した「かまいたち」こそが優勝トロフィーを手にするにふさわしいコンビだったと思います。
二本も三本も別ネタを用意することがとても大変であることは重々承知の上で、はっきりそう思います。
そこを守ってこそM-1は真に権威となります。