人は石垣、人は城

若手社員が離職することは会社の最も深刻な問題だと思う。
「人は石垣、人は城、人は堀 、情けは味方、仇は敵なり」。
武田信玄の言葉と伝えられているが、まさに人材こそが組織の要だ。

「●●が辞めたいと言ってきました」
このセリフは何度聞いても気持ちが沈む。
慣れることは決してないだろう。
そして多くの場合、私の耳に入ってきた時点でもう本人の決意は固く、次の働き先を決めてしまっているケースが少なくない。そうなったらもう手遅れである。

離職の理由はいろいろだが、
1)給料が安い
2)休みがない
3)拘束時間が長い
の3つが多い。

給料については一時、人材確保の面から何年にもわたって初任給を上げてきた経緯がある。
他社平均と比べれば、若手の給与については平準であり、近年はむしろベテラン社員の水準を是正しなければと思っていたところだ。
その点を理解していない若手社員も少なからずいたが、うちより高いところも多々あるので「給与は低くない」とこちら主張するにも限界がある。

休みは会社の暦上は週休二日が確保されている。
しかし現実は、休みでも数時間出社する営業職が多い。
翌日販売の青果物が前日に出荷されるため、産地側と交渉したり販売先への数量配分をする必要があるからだ。
単純作業ならば部や課で当番制にすればいいのだが、どうしても担当者でないと判断できないことが多々あり人には任せられないと営業職は口を揃える。

拘束時間で一番の問題は手待ち時間だ。
産地の出荷数が確定するまで待機、先輩社員からの指示が出るまで待機など。
手待ち時間が多いのはモチベーション低下につながる。

以上、給料面については理解を求めたいところもあるが、労務面については各部署で改善方向を探らなければならない。
「仕方ない」で済ませてしまっては人がいなくなる。

また、根っこのこととして、この仕事における働きがいを我々は若手にもっと伝えるべきであると思う。

今までバリバリ仕事をやってきた者はやりがいは持ってやってきている。
モノがない時は必死になってかき集め、お客の必要な量をなんとか揃えて提供した。
逆にモノがナヤミに入った時、産地で溢れかえった分を一手に引きうけ捌いた。相手もこちらが苦しい思いをしてがんばってきたことがわかっている。
結果、顧客や産地と揺るぎない信頼関係を構築できた。
ベテランの各人にはこのような格別な成功体験がある。
それが若手に伝えられていない。
いや、今の時代、上司の成功体験を押し付けても通用しないかもしれない。
だが、先輩社員自身が充実し、誇りを持って仕事する姿を見せなければいコミュニケーションは始まらない。

コミュニケーションと業務連絡は違うのだ
(エディ・ジョーンズ)。
うちは働きがいがある会社だと社員のほとんどが思ってくれるよう、未来を必ず変えてやろうと思う。