青果物卸売業界でも近年は契約取引が拡大している。
ある産地(例えば〇〇農協)と、ある品目(例えばキャベツ)について、年間にこれだけの量をこれだけの価格で取引します、と事前に取り決めるやり方だ。
青果物はその時々の気象状況により数量の増減が激しく変動し、取引相場が乱高下する。
低迷し単価安になると生産農家の手取りが確保できなくなるので、あらかじめ単価と数量を契約で縛っておこうとするものだ。
単価が契約で保証されれば、農家は安心して生産に専念できる。
近年の青果物は、高値が続き農家が大儲けすることは稀であり、安値に苦しみ再生産価格を割り込むことが多くなっている。
だから、できるだけ契約を増やして手取りを確保しようと農協側は頑張る。
そして、契約取引に意欲的に取り組む卸売市場を優遇する傾向が強くなる。
契約に後ろ向きな会社には、通常の出荷も縮小しますよ、下手すれば取引全体を切りますよ、ということになる。
大型農協との契約取引は非常にリスクが大きく、卸売市場にとっては厳しい条件となるが、お互いに商活動であるから、致し方ない時代の流れと言える。
しかし、解決すべき問題は多い。
もし、実勢相場が契約価格より下回るとどうなるか。
契約は“絶対”なので、実勢相場がどうあれ、卸売会社は契約価格で対象品目を引き取って販売しなければならない。
実勢はそれより安値でしか販売できないから、その差額は卸売会社が損失として計上することになる。
卸売会社は価格を保証するのである。
逆、すなわち実勢相場が契約価格より高い場合はどうか。
実勢相場が高いのは、ほとんどの場合、想定していた生産量よりも実際の収量が大きく下回ったせいだ。
その下回り方が極端な場合、契約栽培の量も確保できないことが時々ある。
「すいません、ものがありません」ということだ。
出荷団体は数量を保証・・・しないということだ。
これはフェアではない。
だって、ないものはどうしようもないじゃないか、という理屈はそもそも契約した以上は理由にならない。
どこからか買い付けてでも無理やり数量を揃えるか(しかしこのケースは契約対象品目に該当しなくなる恐れ大)、数量を揃えられなかったペナルティを明確に定めるか、当然、出荷する側も相応のリスクを持たねばならない。
とはいえ、変動激しい青果物だ。
この業界にはこの業界の沿った契約のあり方があるはずである。
今までは一般工業製品の世界を模倣しての契約内容で、実情にそぐわない点が多々あった。
契約の推進そのものはいいことだが、一方に逃れられないリスクがあり、一方にごめんなさいで済む逃げ道があるのは健全ではない。
健全化するには単一企業でなく、業界で交渉する作業が必要である。
だから今、卸売市場業界には、リーダーシップを発揮でき、公的使命を持ったリーダーが必要である。