本の読み聞かせ
子どもが本をぜんぜん読まないのでどうしたものか、と親戚が私の家内に相談したそうです。
その時、横にいた長男がこんなことを言ったそうです。
「僕が本を読むようになったのはお父さん(=わたし)のおかげ。僕が幼いころ、仕事から帰ってきて眠くて仕方ないはずなのによく本を読み聞かせてくれた。一番覚えているのは『がんばれヘンリーくん』。それが面白かったので、後は自分で読み続けるようになった」
お父さんの「おかげ」なんて殊勝な言葉を本当に言ったかどうかは定かでないですが、もちろん悪い気はしません。
その本のことは、よく覚えています。
日記を調べると、2008年のクリスマスプレゼントに買ったとあります。
長男8歳の時ですね。
そろそろ絵本は卒業の年齢だけどまだ自分で本を読み進める力は弱いかなぁという時期。
小学校中高年向けですが、読み聞かせから入れば理解できるだろうと思って買ったのです。
「ゆかいなヘンリーくん」シリーズは米国の作家が書いた本で、小学3年生の陽気な少年ヘンリーくん身に次々とゆかいな事件が起こるお話です。
今でも思い出すのがグッピーの話です。
つがいで買った2匹のグッピーをジャムの空びんに入れて飼うのですが、どんどん繁殖してしまい、家じゅうがグッピーのびんだらけになってしまいます。
ヘンリーくんは子供ながらに困り果ててしまい、ノイローゼのようになってしまう。
その様子がおかしくて、わたし自身笑いをこらえることができず、息子と二人でげらげら笑いながら読んだことを覚えています。
やっぱり読書は楽しくなければ。
息子が「本は面白い」と思ったきっかけがこの時だとしたら、親としてはとてもうれしく思います。
でも本の読み聞かせはいつも楽しいとは限りません。
時には苦痛以外の何ものでもない場合も。
長男が一番しつこく何度も読んでくれとせがんだ本は「ぼうけん!はらぺこじま」でした。
「ごちそうじま」の地図を見つけた、はらぺこどらねこのプッチ、ピッチ、ペッチの3匹がごちそうを求めて迷路など問題にチャレンジしながら物語を進めていく知育型絵本です。
数回であれば何てことないのですが、息子はものすごく気に入ったようで、ある時期は毎晩毎晩こればかり要求しました。
子が求めれば、同じ本を繰り返し読んであげることは読み聞かせる側の責務と思います。
が、内容はただのパズル本なので、読んであげる身として非常に辛いものがありました。
その点、斎藤隆介氏の「モチモチの木」はすごかったですね。
あれも何十回と読んであげたはずですが、臆病な豆太が泣きながら夜中一人で夜道を走るシーンは、毎度読んでもこみあげてくるものがありました。
何かを守ろうとするとき、人はものすごい勇気を出せる。
やさしさ=強さというメッセージ性。
そして、クライマックスでモチモチの木が光る。
闇から光へ。
その芸術的な美しさ。
恐怖が恍惚に昇華するドラマチックな体感。
幼児が自立した少年に成長した瞬間に立ち会ったかのような感動がありました。
子に感動を与えられれば、その後は放っておいても成長していくでしょう。
私は一つか二つでもそうした機会を与えられたのか、と振り返ってみますが、まったく自信はありません。
ただ、長男の冒頭の言葉はとてもうれしかったです。