超早朝の水産卸売場

金沢市中央卸売市場は青果部(野菜・くだもの)のせりが始まるのは朝6時で、水産(さかな)は朝3時半だ。
3時半は市民感覚としては朝ではなく深夜というべきか。
魚がここからまた全国に発送されるので、日本でも最もせり開始時間が早い市場になっている。

私が市場に着くのは最近は4時前後であり、たまに水産の方もぶらりと歩いて様子を見る。
青果はこれから起きだす時間帯(仲卸は深夜から働いている人も少なくないが)。
水産はせりが終わって興奮いまだ冷めやらぬ時間帯。
その温度差が面白い。
この時間は水産の人の方がテンションが高い。

今朝は水産の仲卸棟を歩いていたら、仲卸「大千」の深美さんがまぐろを包丁でさばいていた。
深美さんは太物を中心に扱う大ベテランの仲卸である。

勉強心旺盛な方で、2年前、私が指導陣の一翼を担う「金澤市場人錬成塾」の塾生として学びに来られた。
キャリアからいって私の方が学ぶべきところが多々ある方なのに、謙虚に、真剣に、課題に向き合う姿が印象的だった。

挨拶してすぐ立ち去ろうとすると「ああ、ちょっと待って!」と呼び止められた。
「これ、カナダ産のマグロの赤身だけど、ものすごうまいから食べてみんか」と言ってパパっとパックにしてくれた。
「え!いいんですか?」とびっくりしたが、それだけで止まらず、
「あとこれは、○○○○で、煮るんでなく塩コショウで焼いて食べると絶品だから!」と言って結構な量のものを新聞紙でくるんで持たしてくれた。
さらに、冷凍庫からカチカチに凍ったネギトロを出してきて、
「これ保冷剤の替わりね」と言ってニコッと笑い、発砲スチロールにすべてを一緒くたに詰めてくださった。

私は終始ポカーンである。
え?いいんすか?気前よすぎ!なんで?
「?」とか「!」が頭の周りを飛び交ってしばらく収集がつかなかったが、この方の底抜けの明るさと優しさに強く感じ入った。

青果の悪口ではないが、全体的な傾向でいうと、水産の人間の方が元気で明るい人が多いように思う。
超早朝の水産の世界は青果とは全く違く世界が広がっていて面白い。