伝統的な食文化は新しい工夫も取り入れながらなんとか継承したいものだ。
1月7日の朝に食べる七草がゆもその一つである。
一年の無病息災を祈り、おかゆに春の七草を入れる。
「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草」
せり=せり(芹)
なずな=ぺんぺん草
ごぎょう=母子草
はこべら=はこべ、あさしらぎ
ほとけのざ=田平子
すずな=かぶ
すずしろ=だいこん
せり、すずな、すずしろはいつでも手に入るが、他の野菜は「なんじゃそりゃ」であって、農家に作ってもらうか揃えてもらわなければ入手は無理である。
そこで近年は家庭で手軽に買えるよう、7種全部をコンパクトに詰め込んだセット商品「七草セット」が人気だ。
我が社では古くから愛知県産で作られたセットを入荷していた。
が、それだけでは面白くない。
そこで石川県内の農家に生産を依頼し、地場産・七草セットの商品化を2012年から続けてきた。
初年度はわずか100パックあたりからのスタートだったが、今や数千パックにまで増やしている。
その立役者は山本智・野菜二部部長である。
大きな柱は二つだ。
①久米農園「春の若草」
石川県の篤農家として名高い、米林利栄、格栄親子が営む久米(ひさよね)農園のセットである。この商品のユニークなところは、加賀の伝統野菜・金時草が7草プラス1として付加されていることだ。
久米農園は金時草の周年栽培(ハウス栽培で一年中出荷)を実現したオーソリティである。
よってこのセットは七草ならぬ八草となっており、人柄もユーモアに富む利栄氏は、この商品を「八千草薫」と呼んでいる(笑)。
また、当社の山本部長の要請により、毎年1月2日に七草(八草)を収穫し、3日~5日にかけて詰め合わせるという、正月返上の作業に追われる。
よって利栄氏は「わしゃ丸果の山本に殺される」といつも言っている(笑)。
②顔の見える能登の食材 市場流通推進協議会「能登の七草」
能登の農家が栽培した野菜を直行便トラックで金沢市場まで運ぶ事業がある。
「顔の見える能登の食材 市場流通推進協議会」という長い名前の事業だ。
JA組合員の農家に呼びかけ、思い思いの野菜を出荷してもらう。
ある意味自由気ままな出荷システムだが、七草においてはこちら側から生産者を募った。
7つの野菜を各自で栽培してもらい、規格を決めてパック詰めまでやってもらう。
そこに貼られる「能登の七草シール」が共通のものだ。
1軒1軒の規模は小さくても、この事業に登録されている農家は奥能登・中能登併せてざっと900人である。
チリも積もれば山となる。
伝統でありながら、新しい試みで誕生した商品だ。
明日の朝、私もこの2種の七草セットでかゆを食べることとする。