出荷と販売の考え方ー五郎島金時を例に

加賀野菜の代表的品目である五郎島金時の部会長、酒栄さんと金沢市農協砂丘地集出荷場の井納場長、新田氏が来社された。
当社は私、嶋田部長、杉本部長、そして販売担当の綿貫君とで応対した。

テーマはズバリ、今後の五郎島金時の有利販売について、である。
会議で決まった具体的な内容については書かない。
企業秘密だ。

ここで書こうと思うのは、産地と卸売会社の立ち位置である。
産地はできるだけ高単価(好単価と書いた方がいいかもしれない)でシーズンを乗り切りたい。
当然だ。単価が高い方が得られる金額が大きい。

卸売会社も基本的には同じだ。
卸売会社は農協出荷物については原則的に委託されて販売する形なので、取扱金額が大きいほうが得られる販売手数料が大きい。

だから産地と卸売会社は利害が一致する。

しかし、卸売会社の場合は販売の実情というものがある。
これ以上高くは売れないという相場感がある。
仲卸・小売に対し、折り合いがつける価格提示がなければ販売が成立しない。
また、足の速い青果物を迅速にさばいていかねばならないスピード感も求められる。
諸々の条件を加味した上で、どんなシナリオで売っていくのがベストか、卸売会社はそこを考える。

昨年秋に収穫された金沢産さつまいもは、例年より不作であった。
キュアリング貯蔵技術で来年5月まで引っ張って売るのが例年のパターンだが、今年は在庫が少なく、5月まではとても持たない。
せいぜいが4月までで切り上がるだろう。
ではこの2月、3月をどんなペースで出荷していくべきか。
そこが会議の焦点だった。

もしも完全契約で、全量一定価格で買い取ると決まれば、こんな作戦会議は不要となる。
しかし、青果物はそうはいかない。
全国各地から様々な作況で出てくる中、誰にも読めない“相場”が常に揺れ動く。
今の時点で価格を固定化することはできない。

一方で、相場の成り行きに任せるだけでもいけない。
産地と市場が思いを一つにして、計画的に販売する行為も非常に重要なのだ。
お互いが不信感を持ったり、内部の意思統一に失敗すると思惑は破綻する。

酒栄さんは市場流通にとても理解の深い生産農家だ。
今年のような難しい作況を産地と市場の協力体制でうまく乗り切ることができれば、成功事例としてお互いの信頼度が増す。
そうなれば来年度以降の更なる平準出荷につながるはずだ。

委託販売だからリスクがない、というのは完全な間違いだ。
委託販売だからこそ、その結果に大きな責任が伴う。
生き残る卸売市場になるには、委託販売の成果を着実に数字で残し、生産者の信頼を確固たるものにしなければならない。