金沢市東山茶屋街のお茶屋「八しげ」が開催する「初春の舞」に行ってきた。
今年2021年1月1日から「八しげ」は女将が真砂美さんに代わった。
これについては昨年12月20日の本ブログで紹介した通りだ。
コロナ禍という逆風が吹きまくる中での継承であった。
世の中は外出自粛が続き、イベントや宴席は極度に敬遠され、芸妓は働く機会がなくなった。
しかし何もしなければ何も生まれない。
新女将は東の芸妓に声をかけ、昼間にお茶屋で芸を披露する小宴を企画した。
いわばお座敷遊びの体験版である。
1月4日から2月2日までの企画だが、運悪く金沢で大雪が降る日もあって開催できない日も少なくなかった。
私は期間ぎりぎりの今日、長唄のお稽古仲間の田町さんを誘って行くことにした。
田町さんはもうお一人、加賀友禅作家の金丸さんを連れてこられ、都合3人で参加できた。
日曜日だというのに、東山茶屋街のメイン通りに人はまばらだった。
コロナ以前は人でごったがえし、大型バスで駐車場は満杯だったのに。
金沢で一番人気の東山がこの有り様では、普通の観光地はすべて閑古鳥が鳴いている。
これはもう、本当にヤバいよ>日本社会
さて、「初春の舞」の時間は40分間。
お茶屋さんは本来は夜のもので、酒や食事をとりながら芸妓さんからの接待を受けるものだ。
だが、今はコロナ禍だから飲み物も食べ物も出せない。
本来の姿ではないが、今できる精一杯の試みだろう。
女将以外は当番制で二人の芸妓さんが芸を披露してくれる。
今日の当番はかつ代(かつよ)さんと七葉(しちは)さんだった。
かつ代さんは東の芸妓の中堅的存在で、唄のうまさでは金沢芸妓で一、二を争うだろう。
七葉さんはかわいい顔立ちで、三味線を中心に芸事にも熱心な若手のホープだ。
内容は、まず芸妓の踊りを2~3曲見る。
続いてお座敷太鼓やお座敷遊びを体験させてもらう。
最後に芸妓らと記念撮影だ。
私を入れて観客は11名で、八しげのキャパのほぼいっぱいだった。
男性5名、女性6名。
お茶屋体験は初めての人がほとんどだったろう。
はじめはみなやや緊張気味で固かったが、女将らが気さくに話しかけながら進行したので、次第に打ち解け、とてもなごやかで楽しいひと時となった。
40分はあっという間に終わった。
あっという間とは、短かったという意味ではなく、面白かったという意味だ。
出し物がぎゅっと詰まって、内容と時間のバランスは丁度良い塩梅だった。
みな満足されたのではないだろうか。
お茶屋文化も農業も、担い手がやめてしまっては元に戻らない。
歯を食いしばってでも続けていかなければ継承しない。
本当に頑張ってほしい。