青果卸売会社の昔からの立ち位置として、委託で出荷してくれた生産者の販売代行者であるから、できるだけ品物を高く売りたい、というものがある。
簡単に言えば、同じ商品でよその市場が2000円の相場で動いているのに、こちらは2100円で100円高く売っているとなると、産地からすればこっちの市場の方が優秀だということになる。
ただ、高く売るにも時と場合によって意味に違いがある。
例えば、今、相場が高いと時とする。
品物が少なく、引き合いが強い場合だ。
Aという品物の相場が1箱3,000円している。
それを頑張って3,100円で売った。
1ヶ月後、相場が急落したとする。
品物がだぶつき、買い手がつかない。
同じAという商品の相場が1,000円になってしまった。
それを頑張って1,100円で売った。
さて、上と下ではどちらの方がより頑張ったと言えるか。
答えは下だ。
品物がだぶつき、売りづらく、値が安くなって行く傾向を“ナヤミ”という。
(その反対に、引き合いが強く、値が高くなって行く傾向を“モガキ”という。)
ナヤミの時に少しでも高く売る方がよほどの苦労がいる。
投げ売りして目の前の荷物の山を片づければ楽になるが、そこを踏ん張って持ちこたえる。
それが産地を支えることになる。
産地と卸売会社の本当の信頼関係はそういう時に醸成される。
苦しい時にともに苦しい思いをして乗り越える。
だからこそ、モガキでイケイケどんどんになった時に、優先的にこちらに出荷してくれる。
ナヤンだ時に安くたたき売ったり、数量を絞ったりする市場に、産地は信頼を感じることはない。
大変難しく、ナヤミの時は苦しいことこの上ないが、踏ん張れる販売担当者を数多く養成することが卸売会社にとっての生命線である。