読書: 岡本 太郎 「自分の中に毒を持て」

自我と意志が突出した偉人

 1988年に出版された芸術家 岡本太郎の人生論だ。異様なテンションで“芸術は爆発だ”と叫ぶテレビCMがあまりに有名で、「天才だが変人」のイメージが強く、常人とはかけ離れた感性の持ち主と思っていた。
 しかし本書を読んでわかるのは、彼が、変人だから特異、なのではなく、自我や意志が突出しているがゆえの傑人であることだ。死を賭してこその生、リスクの高い道ほど選ぶべき、という主張は、守るべきものがある者にとっては、なかなか素直に受け入れがたいメッセージだ。だがそれをやってこそ突き抜けた境地に達する。それが読む者にダイレクトに伝わるエネルギーがある。人生に必要なのは幸福ではない、“歓喜”なのである。

以下、気になった箇所を記録する

・人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。
・心身とも無一物、無条件でなければならない。捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。
・死に対面する以外の生はない
・挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などはない。
・もちろん怖い。だが、そのときに決意するのだ。よし、駄目になってやろう。そうすると、もりもりっと力わいてくる。
・危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ。ほんとうはそっちに進みたいんだ。だから、そっちに進むべきだ。ぼくはいつでも、あれかこれかという場合、これは自分にとってマイナスだな、危険だなと思う方を選ぶことにしている。
・何かを貫こうとしたら、体当たりする気持ちで、ぶつからなければ駄目だ。
・いのちを賭けて運命と対決するのだ。そのとき、切実にぶつかるのは己自身だ。己が最大の味方であり、また敵なのである。
・駄目なら駄目人間でいいと思って、駄目なりに自由に、制約を受けないで生きていく。
・好奇心というのは、そのように生命を賭けて挑む行動に裏打ちされなければ、生きる感動としてひらかない。
・「いずれ」と絶対に言わない。
・自分がいちばん辛い思いをしているのは、“現在”なんだ。
・自分で駄目だろうと思うことをやってみる
・自分を殺す、そこから自分が強烈に生きる
・自信はない、でもとにかくやってみようと決意する。
・今やりたいことに、全身全霊をぶつけて集中する
・誰かと会ったら“ひょっとしたら、この人も恐怖感を持っているかもしれない”と思って、相手を同情してやる。また、同時に自分自身にも同情してやる。“オレもお前もほんとうに可哀そうなヤツだ”と思う
・恐怖感は自分ひとりでなく、これは人類全体の運命なんだと思って、取り組んでいけば、意外に救われる。
・未熟ということをプラスの面に突き上げることが人間的であり、素晴らしいことだと思わなければいけない。
・下手ならなお結構
・ニブイ人間だけが「しあわせ」なんだ。ぼくは幸福という言葉は大嫌いだ。ぼくはその代りに“歓喜”という言葉を使う。
・行きづまりをきりひらくには、ぼくのように、行きづまりに追われたら逃げないで、むしろ自分自身を行きづまりに突っ込んでいく。
・ぼくは幸福という言葉は大嫌いだ。ぼくはその代りに“歓喜”という言葉を使う。
・強烈に行きづまった自分に闘いを挑んでいくことだ。
・強くならなくていいんだと思って、ありのままの姿勢を貫いていけば、それが強さになる。
・よしそれなら今度から、好かれなくていいと決心して、自分を投げ出してしまうのだ。駄目になって結構だと思ってやればいい。
・矛盾のなかで面白く生きよ
・ジャングルの中を押し分けていくあの冒険。不如意。希望。失意とファイト。その孤独の戦いともいうべきロマンティシズムを、意志的に自分に課すのだ。
・人生うまくやろうなんて、利口ぶった考えは、誰でも考えることで、それは大変卑しい根性だと思う。
・とことんまで明朗に、自分をごまかさずにやれば、案外通るものなのだ。そしてそれが嫌味ではなくて魅力になって、みんなにプラスになるから、“ああ、やってよかった”と思えるようになるのだ。
・激しく挑みつづけても、世の中は変わらない。しかし、世の中は変わらなくても自分自身は変わる。
・男女同権が実現されるのはいいことだけれど、それは男と女が同じように行動し、同じ役割を果たすということではない。
・歓喜は対決や緊張感のないところからは決して生まれてこない。
・芸術はきれいであってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいけない。それが根本原理だ
・アガキの中にこそ、今まで自分の知らなかった新しい自分が出現してくるのだ。
・自分の胸の奥深いところに神聖な火が燃えているという、動かし難い感覚
・情熱を噴出させる歓喜は消費であり、安らぎと充実による恍惚感は蓄積だろう。
・芸術は呪術である。
・すべての人が芸術家としての情熱を己の中に燃え上がらせ、政治を、経済を、芸術的角度、つまり人間の運命から見かえし、激しく、強力に対決しなければならない。
・人間は祭りのために生きる、と言ってもよい。
・祭りによって“いのち”を確認し、全存在としてひらくのだ。
・自分を大事にしようとするから、逆に生きがいを失ってしまうのだ。
・人間本来の生き方は無目的、無条件であるべきだ。それが誇りだ。