へた紫なすの初荷とウンチク

生産者の林さん(左)と山野市長(右)

〝共撰〟へた紫なす(丸なす)の初出荷

 本日、加賀野菜に認定されている「へた紫なす」(別名 丸茄子
丸なす)の初売りが行われた。正確に言えば、JA金沢市崎浦支店が出荷する〝共撰〟の「へた紫なす」である。

〝個撰〟と〝共撰〟

 説明が要る。この茄子自体は、今年は6月3日から入荷が始まっていた。生産者名は林繁樹さん。いわゆる〝個撰〟品である。林さんが個人農家として出荷した形だ。それが今日からJA金沢市崎浦支店が出荷者となる〝共撰〟にスライドする。
 〝共撰〟の生産者は誰か? 実は変わらず、林繁樹さんお一人なのである。今、へた紫の部会のメンバーは林さんお一人しかいない(林さん以外にも多田礼奈さんという若手がへた紫なすを生産されており個撰で出荷されているが、共撰部会には入っていない)。
 同じ一人の生産者なのに何をもって〝個撰〟から〝共撰〟にスイッチするか。これは加賀野菜というブランドの担い手としての矜持と厳格さが背景にある。これぞ加賀野菜とお墨付きを得るものは、共撰かつ秀品だけに貼付が許されるブランドシールである。よって、作り手がたった一人であっても、共撰・秀品を出荷しなければ真に加賀野菜を出したとはならないのである。収穫しはじめの6月は、林さんのところでも品質とロットが定まらない。よってその期間は個撰として出し、ピーク期に入って品質と量が安定したころから共撰とする。実際は同じ一人の生産者であり、同じ種だ。堅苦しい決めごとのような気もするが、ブランドイメージを保つための厳格さと捉えるのが正しい解釈だろう。

今後の生産者の拡大を望む

 しかし、いつまでも生産者一人というのが良いわけがない。もっと担い手が増える方向にもっていかねば。その点で重要なのが生産支援と販売支援だ。
 生産面では、へた紫なすは普通の中ナスに比べて栽培が難しい。手間がかかり体にも負担がくる。栽培上で特別に支援する政策が必要だ。
 もう一つの問題は価格だ。作るのが難しいくせに、値段が相応に出ていない。下手すれば普通の千両なすの方が高い。これでは生産者は作る気にならない。丸なすは浅漬けにすると何とも言えない風味があって格別うまい。しかし現代人はあまり漬物自体を食べなくなり、昔ほど需要がないのが現実だ。普通のなすより高くても、市民が買い求めたいと思わせる価値を見出さねばならない。それは新しい食べ方か、それとも懐古的な訴えか。放っておいても需要は増えないので何か流通関係者による仕掛けが必要である。

へた紫なすの未来に向けて

 林繁樹さんがお一人で支えてこられたこの希少種を絶やしてはいけない。多田礼奈さんが独自にトライされてきた振興活動も、もっと花開くものにできないか。これからは、プロモーションを売る発想で当方も知恵を出していかねばならない。