ナヤミは悩ましいのだ

今、野菜はナヤミである

 今、野菜が安い。供給量が需要を上回り、モノが余り、価格が下がっていく状況を市場用語で〝ナヤミ〟という。マスコミは野菜が高い時はすぐニュースにするくせに、ナヤミの時はあまり報道しない。「安いからどんどん買って食べよう!」とメディアがあおってくれれば皆が助かり、消費者も健康になるのに。報道は逆方向にばかり行く。

ナヤミは誰も得しない

 野菜の値段は乱高下が激しく、ナヤミの時は一箱でも数百円しかつかない。例えばキャベツ(1箱8玉)が卸から仲卸へ600円、仲卸からスーパーへ640円で売買されれば、640円÷8玉=80円/1玉の仕入れとなるが、店頭では128円で売られたりする。スーパーからは「それ以上安くしても売れる数は変わらない」という話をよく聞く。売価が128円ならば、卸とすればもう100円か200円高く買ってほしい。そのくせ卸は、産地希望価格に沿うべく700円か800円で仕切っていたりする。卸が損をして、代わりに誰かが得をしている…というわけでもない。スーパーも点数が伸びないので大した収益にはならないのだ。実勢相場より若干高い仕切りとなっても産地としては満足なレベルではない。つまりナヤミの時は誰も喜ばない図式が頻発する。おかしい。

せめて消費の促進を

 昔と違って安ければ大量にモノが動く時代でなくなった。消費者は安くても必要な分しか購入しない。かつてはモノがだぶつくと加工業者がまとめて持っていったが、近年は原料を契約的・計画的に調達する傾向が強まり、市場の暴落時にも出てこなくなった。よって、値と荷動きが低調になると、単純に売り上げ金額が伸び悩むだけになりがちだ。せめて末端売価を相応に下げて「安いからどんどん買って食べよう!」と消費者に訴えかける風潮にできないかと思う。