東京五輪前半戦の感想

1.開催の賛否問題

 世界的なコロナ禍で、東京五輪を開催すべきだったかという根本問題については、閉幕後に考えを述べたい。ただ、昨年、2020年開催を1年だけ延期したことに私は批判的だ。最初から2年延期を打ち出していれば、すんなり2年で通ったのではないか。もし1年延期の理由が(噂されるように)安倍前総理の〝自身の残留中に開催したい〟という自己満的なものだったならば許しがたい。
 最近、国内の感染者数が急増していることについて、五輪開催のせいとは現時点では思わない。競技開催地だけが集中的に増加するなら話はわかるが、五輪と関係ない地域(たとえば我が石川、金沢)もひどい状況だ。やはり折悪しくもデルタ株の感染力が物凄く、開催・中止に関わらず感染が大きく拡大したと考える。

2.金メダル…若手や新競技の躍進

 開催前のメディアによる金メダル獲得予想〝30〟を上回るペース(7月31日終了時点で17個)で前半戦は盛り上がった。しかし内容的にはかなりの番狂わせがある。総じて言うと、新しい種目と若手が躍進して予想外の金メダルを獲得し、反対にメダル確実視されていた選手の敗戦が目立った。前者は堀米雄斗、西矢椛(スケートボード。特に西矢は最年少記録更新の13歳)、阿部一二三・阿部詩兄妹、素根輝(柔道)、後藤希友(ソフトボール)、橋本大輝(体操)、フェンシング男子エペ団体などだ。

3.よもやの敗退…世代交代の感もあり

 バドミントン勢総崩れ(桃田、奥原、山口、ナガマツペア、フクヒロペアらが敗退)。内村航平(体操鉄棒)、大坂なおみ(テニス)、瀬戸大也(競泳)、森ひかりら。一番の誤算はやはりバドミントンで、特に桃田賢斗はこの何年間もの経緯があまりに不運で気の毒だったため、勝って栄光を掴んでほしかった。

4.日本柔道の復権

 柔道は男女団体総計15の競技のうち、9個の金を日本が独占するという偉業を成し遂げた。2012年のロンドン五輪で松本薫の1個だけに低迷したのと比べる隔世の感がある。これには日本代表監督の井上康生の力が大きい。日本柔道どん底期の2013年に監督就任後、科学的データを導入したトレーニング指導、対戦相手の情報分析、選手の身に寄り添ってのメンタルケアなど、柔道界の古い体制を一新し再構築した8年間が結実した。指導者、統率者の器がチーム全体の成果を左右する例であり、これはスポーツ界のみならず会社経営にも参考にすべき点が多々あるだろう。

5.後半戦への期待

 8月からの後半戦も金メダルが期待できる有力選手・種目はたくさんある。空手、レスリング、野球、競歩、マラソン、ボルダリング etc.
金は出来すぎかもしれないが予選リーグを見る限り男子サッカーの強さには舌を巻いた。後半戦も大いに期待する。