東京五輪が終わっての感想

無事に日程を終了

 東京五輪が17日間の日程を終えた。1年延期、数々の不祥事、緊急事態宣言、無観客開催というあまりにも異常な環境下、なんとかすべてをやり切った。国、都、組織委員会、IOCが足並みがそろっていなかったのは大きな問題だったが、実際に大会を支える事務方の対応力が極めて優秀だったのだろう。無事に閉幕までこぎつけたことは大いに称賛に値する。おそらくは表面に出てきていない〝縁の下の力持ち〟がいるはずで、マスコミは今後、こうした功労者にスポットを当てた報道もしていただきたい。

開催したことを支持する

 感染状況という点では、むしろ延期せず昨年のうちにやってしまえばよかったが、これは結果論である。人智でコロナウイルスはコントロールできない。2021年の1年延期とした経緯に私は批判的(理由は7/31のブログに書いたとおり)だが、決めた以上は腹をくくって開催したことを私は支持する。もし中止にしていたら、失意と後悔が残るだけに終わったと思う。何も生み出さず、何も変わらず、日本は沈没する。これから厳しい現実が押し寄せると思われるが、オリンピック運営を乗り切ったことで、人智によって社会は良くも悪くも変化することを学んだ。

紆余曲折しながらの運営

 開催に対する批判の声は海外からも聞こえてきた。腰が砕けたのは政治における各国要人達で、相次ぎ開会式をキャンセルした。感染対策として選手と関係者を五輪会場と選手村に閉じ込める〝バブル方式〟を取り入れたが、それでも五輪関係者の感染が相次いだ。また途中、猛暑によって試合開始時間を直前に変更するなど数々のごたごたはあった。だが不手際は不手際なりに、とにかく大会運営を乗り切ったのである。

〝心を動かす〟スポーツの力

 何より、蓋を開けると205ヵ国、11,092人もの選手が予定どおり参加したことが大きい。連日にわたり熱戦、名勝負を繰り広げたことで世論は変わった。やはり選手たちにとってはリスクは承知でも参加する価値と魅力が五輪にはあるのである。いかなる社会不安が横にあろうとも、人々を熱狂させる五輪の力だ。それは人びとの乾いた心を潤す力を持っている。いみじくも柔道の大野将平は優勝のインタビューで次のように言った。〝賛否両論があることは理解しています。ですが、われわれアスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば本当に光栄に思います。〟 五輪のせいで感染が爆発的に増えたり、何かの試合が中止になったり、大混乱が起こったりしていれば、また評価は変わったかもしれない。無事に閉幕できたことは多分にラッキーだったかもしれない。評価は結果論であるものの、五輪は開催してよかったと思う。スポーツによって、人々の中で、何か心が動く。スポーツの力は偉大だ。