産地の〝当たり前〟が変化してきた

委託時代は終焉か

 系統産地(全農を頂点とする農協系統組織が出荷する市場流通)からの青果物は、卸売市場に対して委託で出荷するのが従来の〝当たり前〟だった。また、卸売市場から先の販売先については卸売会社にお任せで、産地は我関知せずがこれまた〝当たり前〟だった。しかし最近はその〝当たり前〟に変化が見られる。

計画的販売シミュレーション

 例えば、ある系統は、主力品目のシーズンスタートからエンドまで、数量・金額・販売先について、計画的な販売シミュレーションを求めてくる。どこ(スーパー)に、何を、どれだけ、いくらで売りますよ、という〝絵〟を見せてくれということだ。その絵が納得できるならば荷物を出すが、卸売会社が旧態依然として「精一杯、頑張ります」と言うだけでは信用できないので荷物は出しません、というわけだ。

買付取引の主流化

 また別の系統では、契約的取引や値決め済みの出荷については、委託ではなく買付で出してはどうかと考えるようになってきた。委託と買付の言葉の意味を考えれば、むしろ健全な変更だ。だが長年にわたって「出荷奨励金」という摩訶不思議な慣例があったもので、委託と買付には大きな壁があった。

双方のリスク

 上記2つの変化に共通するのは取引価格の事前取り決めだ。これはそう簡単な話ではなく、価格の事前決定によって、産地と卸売会社の長年にわたる基本的な関係性(すなわち、委託販売においてこそ、お互いに商品を高く販売したいという利害一致が生まれる)が崩れてくる可能性がある。買付が増加すれば、卸売会社にとっては、従来よりもリスクが増加する一方、引き受ける数量を決める裁量が与えられてしかるべきだ。いくらであれば、これだけやりますと。これは系統産地にとっては損得が微妙だ。相場に関わらず、数量の決まりは守ってもらわなければならない。あ、もうないですわ、では済まされない。この50年間、市場が産地に対して便利に機能してきた最大のポイントは「需給調整」ではなかったかと思う。産地は、ない時(モガキ)は出さないで済み、余りまくっている時(ナヤミ)は押し付けて済んできた。買付が主流になるとこの技が使えなくなる。

時代の趨勢、体質の変化

 だが、これはおそらく時代の趨勢なのだと思う。今後、産地と市場の関係性は買付主体になる。市場は委託手数料で成り立つ時代から、差益で商売する時代に変化しなければならない。仕入・販売担当者の考え方、優秀な営業マンのタイプも変化せざるを得ないだろう。難しい時代へ突入だ。だが、私にとっては多分これからの時代の方が合っている。ワクワクして進みたい。