さつまいも勢力図

金沢が誇るさつまいも(サツマイモ、甘藷)といえば「五郎島金時」だ。
こっぼこぼの食感(「こっぼこぼ」は「ほくほく」の金沢弁)が持ち味である。

だが、近年は鹿児島県種子島が発祥の「安納芋(あんのういも)」の大ブレークに始まり、数々のライバル達がのし上がってきた。
特に勢いのあるのが「紅はるか」と「シルクスイート」である。
安納芋、紅はるか、シルクスイートに共通するのは、甘みの強さとねっとり食感だ。
最近、焼き芋にすると人気なのは「ほくほく系」よりも「ねっとり系」である。

簡単に品種を紹介する。
(自分にとっての備忘録でもある)

○紅はるか

2010年品種登録。
焼き芋に最適な品種と言われる。
冷めても甘く美味しいのが強み。
最後の一口までも甘い印象が続く。
繊維質はしっかり感じられるもののねっとり、しっとりした食感だ。
従来の品種の甘さを「はるかに超える」という意味のネーミングだ。

○シルクスイート

2012年前後から市場に出回る。
名前のとおり、絹のようななめらかな食感が売りだ。
また名前のとおり、スイーツになるほど甘みが強いのが特徴である。
濃厚な甘みながらも最後の方はすっきりした感じで食べ終わる。
したがって他の品種よりも上品な感じも漂う。
繊維質は少なめ。

○安納芋

鹿児島県種子島の安納地区の特産。
甘みがとにかく強い。
食感はねっとり(べっちょり)系で焼き芋にしての店頭販売で人気に火が付いた。
甘みが濃すぎ、最後の方はしつこく感じる人もあり。

○紅あずま

東のベニアズマ、西の高系14号といわれたほど、関東で主流の品種だ。
作りやすい=病気になりにくく、反収が上がる、のが特徴だ。

○五郎島金時

金沢市粟ヶ崎・五郎島地区の特産品。
品種は鳴門金時や宮崎紅と同じ「高系14号」の系統である。
ホクホク感が強い。

五郎島金時はブランド戦略が成功し、、金沢の生産地に多大な貢献をした。
その価値は今後も続くし、加賀野菜の代表的存在として光を放ち続けるだろう。
だが、石川県の甘藷作りも曲がり角に来ている。
「高系14号」だけに頼っていてはこれからの時代、競争力で今一つ優位性を発揮できないかもしれない。
しっとりねっとり系の品種も取り入れ、新たな品種改良にも乗り出すタイミングではあるまいか。

金沢のさつまいも農家は腕がいい。
試しに作った「紅はるか」は、本場の九州や関東のものよりさらにおいしく仕上がった。
まだまだサツマイモには可能性がある。