石川県産のブランドいちじく「黒蜜姫」
「黒蜜姫」が人気だ。「くろみつひめ」と読む。石川県宝達志水町の特産いちじくである。能登の宝達志水町は昔から県内最大のいちじく産地である。主に「ドーフィン」という品種を作ってきたが、競争力の強い高級ブランド品を作り上げようと、黒イチジクの品種「ビオレソリエス」を導入した。そして昨年、愛称を公募し、751件もの応募の中から「黒蜜姫」と決めた。今年からは出荷の箱も専用のデザインとなった。
ビオレソリエスについて
黒蜜姫ことビオレソリエスは、皮が薄く、ドーフィンよりも色が黒く、果肉は紅色、ねっとりとした食感が特徴だ。フランスが原産で、別名〝パリジェンヌ〟と呼ばれることもあるらしい。18度以上ある高い糖度が武器で、甘いものになると20度以上になる。適度に酸味もある非常においしい品種だ。出荷者は「JAはくい押水いちじく部会」。同部会は約40軒のいちじく農家が共撰体制を敷くが、そのうち黒蜜姫を手掛けているのは11軒だ(令和3年時点)。人気が高く、値段もドーフィンの2倍高く売れるので、生産農家は今後増えることだろう。9月下旬から11月中旬まで出荷が続く。
栽培に難しい品種
しかしいいことばかりではない。収穫時期の見極めが非常に難しい。皮が薄く、糖度が高いので、品傷みや腐りが出やすいデリケートさを持つ。熟度によっては果肉が割れ、蜜があふれ出てきてしまう。まさに一番の食べ頃のタイミングなのだが、流通段階ではNGとなるので、収穫と流通に繊細な注意が要求される。
食べるタイミングを絶対にはずすなかれ!
消費者にぜひ知っておいてほしいことがある。買ってすぐに食べればいいとは限らないことだ。いちじくは追熟する。手に取って押してみて、柔らかく、お尻から蜜があふれるほどになるまで待って食べること。完熟の印だ。その前に食してしまうと、よくある「ドーフィン」とあまり変わらずがっかりすることになる。逆に、最高のタイミングになれば、この上なく豊潤で濃厚な甘さを味わえ、柔らかい果肉、ねっとりとした舌触りも楽しめる。
今後の増産に期待
県外からの引き合いも強いので、文字通り今は「幻のいちじく」となってしまったいる。ぜひ産地での増産を期待したい。とにかく、またまた新しい石川ブランドの誕生だ。