澁谷弘利氏が12日に他界
澁谷工業社長の澁谷弘利(しぶや・ひろとし)氏が12日に他界された。90歳だった。新聞によると氏は12日朝に自宅で体調不良を訴え、救急搬送され、その日のうちに息を引き取られたそうだ。
まっすぐで激熱の人生
岡田直樹参院議員の連合後援会長を務められたので、いろいろな席でご一緒させていただいた。本当に、まっすぐに前を見てモノをおっしゃる方だと印象が強い。世にはまっすぐにモノを見てまっすぐに話す人と、曲げてモノを見てくねらせながら話す人の二通りがある。渋谷氏は間違いなく前者であった。人間、真っ当に生きれば最高の成果を出し、人格にも磨きがかかるのだ。そう素直に思わせるお人柄であった。
イチゴとレーザービーム
私の会社の会長を気に入ってくださり、「いちごに滅菌レーザービームを照射したら、鮮度保持がよくなるんじゃないか?協同して補助事業に応募し、実証事業を行おう!」と3年ほど澁谷工業とタイアップさせていただいた。残念ながらこの事業は日の目を見ることはなかったが、私としてはいい経験をさせてもらった。実験確認のために、たった一人で台湾旅行をする羽目にもなった。今となっては良い思い出だ。
趣味が高じて…?
澁谷氏は、趣味のゴルフではエージシュートを350回以上記録したそうだ。怪物である。破綻仕かけたゴルフクラブ「リンクス」を引き受けた。女子プロの大会「シブヤカップ」も手掛けた。これは道楽ではなく、ゴルフ界と地域に対する奉仕の念がなさしめたものだろう。
相続税の配慮から覗き見える優しさ
食事の席で、今の日本の相続制度に異議を唱え、持論を展開されたことを覚えている。「もし私が何も整理せずに突然死んでしまったら、残された遺族は、私の相続税を払うのに大変な目に合わなければならない。私はそれが心配だから、すでにきちんと財産分与の処理をきっちり整理した。相続税にあたる分はしっかり現金でよけてある」とおっしゃった。わかる人にはわかる。これはすごいことだ。身内に対する素晴らしい配慮であり、優しさの現れだ。
潔い旅立ち
見事な一生だ。生涯現役。東証1部上場企業の代表取締役では日本で最高齢だった。頭脳明晰で長期に渡り企業を牽引し、この世を去る時はあっという間に。こう言うと無礼かもしれないが、男として憧れる死に方だ。私も90歳まで進化する人生を送りたい。ご冥福をお祈りします。