企業人講和
昨日、午後より金城大学短期大学部の1年生110名を対象に「企業人講和」なる話をしてきた。短大生は年明けから早くも就職活動が始まる。学生さんが企業の人事役職担当から、専門科目内容を学ぶ心構え、求められる人物像、業界における就活のポイントを聞く機会とする授業だ。なぜか私が「フードビジネス業界」の代表としてご指名を受けた。金城さんには恩義がある。私で良ければ、と引き受けさせていただいた。20分間の講和である。そこで私は、「求められる人物像」として、〝仕事に楽しさを見いだせる人〟〝人を幸せにしたいと思う人〟の二点を挙げた。さらに、就職前の準備として、〝出汁から料理を作ってみる〟〝自分で大枚はたいて、一流料亭に食べに行く〟を挙げた。
仕事に楽しさを見いだせる人
アドラー心理学に触れてから思うようになった価値観だ。自分探しをしても自分なんてみつからない。そもそも空っぽに近い自分にとって、私に合う職業なんてあるはずがない。一方、万人が楽しいと感じ、万人がつまらないと感じる仕事もない。価値観、感じ方は人それぞれだ。よって、〝楽しい仕事を探し出そう〟としても失敗する場合が多い。必要なのは、どんな仕事であれ、〝仕事の中から楽しさを見いだせる感性〟だ。それができる人間なら、極論、どの職業についてもやっていけるし、そういうセンスこそが大事なのである。
人を幸せにしたいと思う人
そもそも人はなぜ仕事をしなければならないのか。生活のため、すなわちお金のためか。ならば、宝くじで3億円当たり、一生遊んで暮らせれば人は仕事をせずに生きていけるのか。残念ながら、お金だけでは幸せになれない。自分が社会に役に立っている、もっと具体的には、誰かを幸せにできていると実感できたとき、人は途方もない充実感を得るのだ。
出汁から料理を作る
金沢に生まれ育ち、フードビジネスに身を投じたいのならば、日本料理の真髄に挑んでみよう。その基本中の基本であり最も奥が深いものは〝出汁(だし)〟だ。特に昆布と鰹節を使うのは日本ならではだ。煮干、椎茸も含め、日本料理の出汁は多種多様で、合わせることで無限のバリエーションを持つ。今はもちろん駆け出しでも、見よう身まねでやってみることを勧める。全く駄目だ、意外と行ける…結果はともかく、何かを感じることができるだろう。
一流料亭に食べにいく
〝出汁から作る〟と根っこは同じである。せっかく金沢にいるのなら、一流に触れること。そのために身銭を切ることが大事だ。普段は安いもの、全国一律のもので済ませていればよいが、1~2ヶ月に1度は、アルバイトで溜めたお金3万円ぐらいを握りしめて、一流料亭に食べに行くことをお勧めする。その味、風味、しつらえ、盛り付けを体感することで磨かれるものがある。