M-1グランプリ:レビュー

6000組の頂点を決める「M-1」

 「THE W」の感想を上げておいて、こちらをスルーするわけにはいかない。お笑いの頂点「M-1」は今年で17回目、エントリー数はなんと6000組超。若手だけで12,000人もの漫才師がひしめく物凄い世界だ。

コンテンツだけでなく総合力が高い

 冒頭、審査員達の紹介のところで松本人志が「この時点でThe Wとは違いますね」と言って笑いを取った。何がどう違うのか定かでないが、ワタシ的にも本当にそのとおりと思う。スタッフ力、番組構成力が雲泥の差で、これが番組全体のグレード・テンポ・面白さに大きく跳ね返ってくる。特に審査員の批評は重要で、M-1は漫才だけでなく審査員とMC(今田耕司)、審査員と出場者のやりとりもレベルの高い漫談になっている。昨年の覇者、マヂカルラブリーは上沼恵美子との絡みがサクセスストーリーの一端を担い、今回はオズワルドと松本人志、オール巨人のやり取りがよかった。この大会に賭ける数年越しの本気が芸に昇華する。優勝は下馬評を覆しての錦鯉だった。M-1史上最年長50歳の優勝だ。昨年よりも格段にレベルが上がって爆笑をとり、優勝の裁定は妥当だった。

人生を左右する「M-1」

 〝M-1に勝ったら人生が変わる〟と言われる。サンドウィッチマン、ミルクボーイなどはその典型で、麒麟、ナイツ、ジャルジャルなど優勝できずとも回を重ねブレークするコンビも出る。息長く活躍するにはその後の努力次第だが、この番組で残すインパクトが大きな転機になるのは間違いない。

ガチならではのピュアな価値

 明石家さんまはお笑いに勝負の世界を持ち込むのに否定的だそうだ。しかし、日本人は基本的に勝負事が好きであり、自分は誰に勝って誰に負けているかを常日頃意識しているのは芸人自身である。そのジャッジに正当性がある限り、コンテストで鎬を削るのは業界のレベルアップにつながる。逆に結果に予定調和が混じってくると水が濁る。ガチであり続ける限り、この番組は観る価値がある。