商業界上の偉業とも言える傑作
マーベル映画「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」を劇場で観た。素晴らしい。これは商業上の大英断によって作り上げた傑作である。愛と情熱と知力を兼ね備えた優秀な人々が折り合って、握手を交わして成し遂げたのだろう。まさに大人の所業である。この映画で歴代3人のスパイダーマンが一堂に会した。決して交わらなかった3つのシリーズが一本に結ばれた。ただの顔見せ共演ではない。中途で頓挫していた各シリーズの伏線を回収し、敵を含めたすべてのキャラクターを成仏させたお手並みは見事だ。
もはや一見さんは理解不可能
大傑作ではあるが、今までのシリーズ(トビー版3作、アンドリュー版2作、トムホ版4作)を見ていない初見の人には「???」の世界である。9本も観ないと理解できないとはハードルが高すぎる。エヴァンゲリオンか金沢東山茶屋街の芸妓文化のようだ。私はトビー版は1,2の2本、アンドリュー版は1のみ1本、トムホ版は4本全部観ていたので、完全ならずともなんとか追えた。そして何ヵ所かはグッと胸にこみ上げてきた。私程度でもそうなのだ。生粋のスパイダーマンファンならどうなってしまうのだろう。アンドリュー登場で1号泣、トビー登場で2号泣、3人揃って3号泣、アンドリューがMJを救って4号泣、最後に皆が成仏して5号泣。これが最低ラインか。いや、メイおばさんのシーンも絶対だから6回だ。そして映画を3回ぐらい見直すだろうから、総計20回程度の滂沱の涙を流すことだろう。
夢を与えんとするピュアな思い
それにしても、マルチバースという設定をうまく使ってよくぞ作り上げたし、役者もよくぞ残っていたものだ。いろいろな利権問題、感情のしこり等が裏ではあったに違いないが、映画ファンのために皆が一肌脱いだのだ。この映画といい、天心VS武尊戦といい、世の中は捨てたもんじゃない。人々に夢を与えんとする情熱は良いものを生み出す。
それにしてもうさん臭い
ここまで大絶賛させてもらったが、冷静に見返すと、マーベル映画のうさん臭さは格別だ。ドクターストレンジのメーク&コスチュームは、キワモノ芸人の域である。キャプテンアメリカというこれまた時代錯誤のキワモノはかなり渋く実写化できたのに、ドクターストレンジ、ビジョン、キャプテンマーベル、エターナルズらのチンドン屋風味といったら本当にこれでいいのかと問い質したくなる。ファンは2時間以上の映画を観続けてそれが当たり前になるのだが。一見さんにはこのうさん臭さがかなり引いてしまう要因になることをヒーロー映画関係者は認識すべきと思う。