青果物の流通はとても細かい

納品の現場体験

 某小売チェーンへの納品業務を手伝ってみた。子会社が請け負っている仕事である。ブロッコリー(1個入り)、柿(2個パック)など、商品単位ごとに店舗合計の発注数がデータで上がってくる。そのちょうど必要な個数を仲卸業者から供給してもらう。店頭のレジでスキャンするシールを打ち出し、商品1個1個にそれを貼る。最後に商品を折りコンに入れてパレットに組み上げる。運送業者がそれを引き取り、配送センターに納品される。これが一連の流れだ。この小売商の場合、こちらは店舗別の仕分けまでは行わない。店舗別に分けるのは小売商側の配送センターが行う。こうした仕組みはスーパー、量販店ごとに独自に決められており、やり方はバラバラである。仲卸やうちの子会社のような納入業者は、それぞれ間違いのないように対応しなければならない。

発注合計1パック!

 大手チェーン店とはいえ発注数は本当に細かい。もちろん、トマトやミカンのような定番アイテムは、発注総計は何百個にもなり、必要な原体箱数もかなりの数に上る。だが少ないものは少ない。本日、あるアイテムの発注数はたった1パックだった。念のため。これは総計である。何十店舗もあっての総合計が1だ。くどいようだが念のため。1箱ではなく1パック。もし発注がりんご1個だったならば、1箱36個入っているりんご原体のうち、残り35個は他の顧客に販売するか別の形で処理しなければならない。卸売会社は基本的に箱単位でしか売らないから、こうした細かい流通に対応するにはどうしても仲卸業者や別会社の仲介が必要になる。その手間、時間たるや大変な労力だ。これが青果物流通の実態である。

中間流通の存在価値

 青果物の流通に何段階か中間業者が介在することをTVや新聞では時に〝悪者〟扱いする。特に、中間を抜いた流通で安価にモノを提供するビジネスモデルを紹介する場合、その〝正義っぷり〟を強調するために必ずといっていいほど市場流通を引き合いに出す。まったく腹立たしい。中間を抜いて安価にモノを提供するのもニーズだが、細かい緻密な品揃えもニーズである。小売商ごとに異なるニーズは、そのお店を利用する消費者のニーズに他ならない。中間が介在した場合、手間と時間に適正利潤を載っけるのは当たり前のことだ。

現場を(ほんのちょっとだけ)知る

 私が手伝うのは、担当社員にとっては本当は迷惑だ。手際の悪いヤツが混じるとかえって作業効率が落ちるから。だが邪魔を承知で時々はこうしてやらせてもらう。私にとっては現場を知る貴重な機会なのである。もちろんこの程度かじっただけでは現場をわかったうちには入らぬ。だがやらないよりはやったほうが全然まし。雲泥の差だ。