「行」を消して「御中」に直す
受験に臨む息子が大学へ願書を出そうとしていた。見ると封筒は大学側が用意した書式のもので、「○○大学 入試広報課 行」と印字されていた。息子に「御中に直してないぞ」と言うと「何それ?」と応える。あら、知らないのか。これ、常識だから覚えときな、と簡単に説明しsた。先方が用意する封筒やはがきには、あて先の末尾がよく「行」とか「宛」になっている。こちらから返送する場合、その字を二重線で消して、相手が人ならば〝様〟、団体や組織なら〝御中〟と直すのがマナーだ。
おんちゅうどの
息子にとっては初耳だったようだ。まあ高校生のうちでよかった。社会人になっても知らずに「行」のまま送り返していては軽くバカにされるところだった。こんなことは学校では教えてくれないのかもしれない。私の場合、小学校3年か4年の時、担任(恩師:屋敷道明先生)が教えてくださったのをはっきり覚えている。先生は基礎知識に続き「私の知人に、よほど相手に礼を尽くしたかったのか、名前の後に『御中殿(おんちゅうどの)』と書いて笑われた人がいます」というエピソードを披露してくれた。その話が面白かったので40年経った今でも強烈に記憶に定着している。
学校で教えない社会常識
学校では教えてくれない、ささいだが知らないと恥をかく常識は他にもいろいろある。大学時代、サークル仲間の親が亡くなり、葬儀に行くことになった。待ち合わせ場所に後輩の一人が〝白い〟ネクタイを絞めてきた。バカヤロウとなって、すぐに駅のKIOSKで黒いのを買わせた。ちなみにこの後輩は東大生である。教えられる機会がなければ、東大生でもこんなものだ。人のことは笑えない。私自身ももしかしたらとんでもなく当たり前のことで、いまだに知らないことがあるかもしれない。(きっとある。)
誰か、常識本を発刊して
昔よりも今の方が常識が欠落している人が多いとすれば、それは世代間や地域、家族の人間関係が希薄になったためだろう。人と人のコミュニケーションが足りないのならば、書籍で補うしかない。ビジネスマナーの基礎知識をまとめた本は数々あれど、生活一般の常識を網羅したものは意外にない。誰か、常識の本を発刊してくれないだろうか。