猿とオレンジ

市役所からの電話

 金沢市の農林水産局の小川さんから電話をいただいた。「市場に廃棄するものはありませんか。できればカボチャか芋のようなもちが良くて甘みのあるものがいいのですが」。何にするのか聞いたところ、なんと猿を捕獲するためという。小川さんによると、この1~2年が勝負所なんだそうだ。そんなに長期に渡る戦いなのか!驚いた。

猿捕獲のための罠

 金沢市内で、猿の被害が結構あるらしい。そんなことは知らなかった。その猿を捕獲するために罠を仕掛ける。餌で釣って檻に入れるのだ。猿をおびき寄せる食材を求めてきたわけである。もちろん猿が好みそうな農産物が良い。市では捕獲用として購入してきたが、卸売市場に協力を求めればもしかして無料で調達できるかもと思ったらしい。

市場の廃棄は実は少ない

 市場には廃棄食材がたくさんあるイメージがあるのだろうか。実は野菜についてはほとんどロスはない。市場は即売が基本。出荷者から鮮度が高いものが届くのが原則なので、捨てる野菜はないのが現実だ。なので協力したいのはやまやまながら、カボチャと芋類に定量定時で提供はできないと答えた。だが、と続ける。輸入柑橘なら出せるので、お試しにどうかと提案した。そして、米国産オレンジのB品を2ケース分提供した。

輸入柑橘の出番

 輸入フルーツは数週間かけて日本の港に到着し、さらに浜の冷蔵庫で保管されながら市場にやってくる。その長期間に何割かはやはり劣化する。腐りを発生すれば廃棄しかないが、その一歩手前ならば十分に生食として通用する。本当は安値ながらお金に替えられるところ、市の活動のために提供することにした。さて、猿はオレンジに手を伸ばすか。腐る手前の果実は香がかえってかぐわしい。結果が楽しみである。