引当金と繰越利益剰余金の勘違い

建設引当金?

 今、会社の決算に望んで、将来必要となるであろう自己資金による建設費用を引当金で積み立てておこうかという検討がなされている。これは将来の設備投資には必要であり、市場再整備を全額開設者(金沢市)に依存するのではなく、自前で建てようという、まことに潔い心構えである(自社自賛)。

ああ勘違い

 だが、なにげなく、引当金の繰入と取り崩しは仕訳上どうなるのかな、とやってみたら???となった。仮にこの引当金の科目を「市場再整備引当金」とする。
①毎年の決算における定額引当繰入(想定仕訳)
市場再整備引当金繰入 ●●万円 / 市場再整備引当金 ●●万円
②取り崩して建築を行った時
市場再整備引当金 △△万円 / 現金△△万円
建物 △△万円 / ???△△万円
ここで、あら?となる。引当金(積立金?)としてお金を横で蓄え、それをしかるべき時に取り崩すのだが、資産として建物が残る。引当金の取り崩しも借方、建物勘定も借方だ。消えない。会社を面倒見てもらっている会計士の先生に聞いてみたら、私はとんでもない勘違いをしていることがわかった。

引当金に対する勘違い

 引当金は、将来発生する経費か損失に対してでないと積めない。すなわち資産に対しては積めないということだ。建物を自前で建てるために積み立てる…ということはそもそも出来ないのである。そう言われれば「~引当金」と名がつくのは賞与引当金、退職給付引当金、貸し倒れ引当金、修繕引当金など、確かに左側(借方)に来るのは経費か損失ばかりだ。

別途積立金にかかる勘違い

 もう一つ、素人は怖いぜと我ながら思った錯覚を発見。市場再整備引当金という使途のはっきりした引当金を積むのならば、その代わりに毎年行ってきた「別途積立金」なんてやめてしまえばいい、と私は思っていた。これもまったくの勘違い。別途積立金は、利益剰余金の内訳を変えているだけのもので、繰越利益剰余金から処分案の対象にならないようはずしているだけだ。〝何もない剰余金だけど、配当などには使わんよ〟と横に確保しておくことができる会計上の数字だ。会計の先生曰く、だから別途積立金は、バカの一つ覚えのように毎年定額を積むのではなく、なるべく繰越利益剰余金が多額にならないように配慮するのが経営的には正しいと教えてくれた。会計知識は経営者なら正しく知らなければならない。