カーネギーの逸話

 鉄鋼王として有名なアメリカの実業家、アンドリュー・カーネギーに次のような逸話がある。大変おもしろい話なので記録しておく。

自殺直前!

 彼にも多くの悩みがあった。政治家からの圧力で会社が危機にある。不倫相手の女性が子供を認知するよう言ってきた。親戚が問題を起こしてばかりでその後始末をしなければならない、甥が警察沙汰の事件を起こし身柄の引き取りにいかねばならない、妻から今夜食事に連れて行かないと離婚すると言われた…。もう限界と思ったカーネギーは自殺を決意した。拳銃を取り出して思った。遺書を書いてから死なねば。説得力ある遺書にするには、自分の悩みをありたけぶちまけよう。カーネギーは黄色い便箋と鉛筆を取り出し、思いつくままに悩みを書き出し始めた。

悩みの数は予想の1/10

 彼自身、思った。仕事に家庭に…悩みはおそらく数百、いや、1000もあるに違いない。ところが、書き出してみるといくら頑張っても約70個しか思いつかなかった。あれ?思っていたよりもだいぶ少ない。そうか、悩みは無数にあると思っていたが、数十個がグルグルと頭をいつも巡っていたために思考が常にパンクしそうになっていたのだ。

4つに分類。そして…

 そしてカーネギーは書き出した問題点を4つに分類してみた。
1.明日解決できること
2.来週以降に解決できること
3.来月以降でも大丈夫なこと
4.解決できないこと
彼は4番目の解決できないことの問題はすっきりと諦め、残り3つを机にしまってそのまま彼は奥さんと夕食へと出かけた。その時には彼の頭から自殺をしようという気持ちはすっかり消え失せていた。

悩みと向き合い対処する手法

 この逸話には誰しもが抱える「悩み」というものの本質と対処法が記されている。人の脳は実はそれほどキャパがあるわけではなく、ほんの限られた問題によって支配され、堂々巡りに陥ってしまう。これがいわゆる「いっぱいいっぱい」の状態で、何も手につかなくなるがいつまでも悩みが解決しない状態だ。頭の中だけで処理をしようとしても埒が明かない。そこで頭の中身を紙に書き出してしまう。書き出してみると、それが思っていたよりはるかに容量が小さいことがしれてくる。ここで初めて悩みの正体があらわになり、実はそれほど恐ろしいモンスターではなかったのだと思い至る。そして、解決できる問題から一つずつ着手していけば多くはかたがつく、となるのだ。紙に思考をぶちまけること。これはぜひこれから身につけたい自己管理手法である。