協議の打ち切り
本日の北國新聞一面のトップ記事が「能登3JA合併断念」だった。JA珠洲市、JAおおぞら(穴水町)、JA能登わかば(七尾市)の3農協は2年前から合併推進協議会で調整を続けてきたが、今年4月の発足が見送られたのに次いで、今回協議そのものを打ち切る決定となったものだ。
石川県の合併構想は暗礁
以前から、調整は難航している、厳しそうだという話は聞こえてきた。だが、石川県中央会が発表した「県内を能登・金沢・加賀の3農協に集約するプラン」の先駆けとして、能登の合併は最も実現性が高いとも言われてきた。それがご破算になった。能登よりも加賀、加賀よりも金沢はさらに調整は難しい。石川県の農協合併は暗礁に乗り上げた格好である。
大農協と零細農協の温度差
他県では県内の農協をすべて統合する「県1JA」も存在する。1999年の奈良県で発足したJAならけん、その後香川と沖縄、島根、山口が続いた。県1JAでなくとも、ほとんどが合併に参画した県の例もある。農協合併は全国的な趨勢なのだ。大型合併は、規模拡大による経営の安定が目的である。合理化・コスト削減によるメリットは少なくない。しかし、民間の株式会社ならば経営トップの判断で他社との合併が一気に進むところ、組合組織は組合員の理解・賛同が不可欠であり、調整が難航することも珍しくない。むしろ、経営状況の良い農協の方が、首を縦に振らないケースが多いと聞く。「こちらは単独でも十分にやっていける。苦しいところとなぜくっつかなければいけないのか」という理屈だ。合併のメリットは零細な農協ほどあるということらしい。
全方位からの再検討を
我々、市場流通業者にとっては、農協合併はメリットがある。今までA県からはA-1農協のみ野菜を委託出荷してもらっていたのが、合併によってA-2農協、A-3農協の野菜も扱えるチャンスになる(こちらの販売能力がなければ、逆にA-1農協も切られゼロになってしまう恐れもあるが、それは当方の頑張り次第である)。その点、今回の合併断念は基本的には残念と言わざるを得ない。石川県ば農業零細県だ。地場野菜の量は少なく、担い手の減少率が激しい。この問題は合併をすれば解決されるわけではないものの、県全域での農業振興の在り方をプランニングする必要に迫られている。全農、各単協、行政、そして我々流通業を含め、全体幸福を見据えた歩みをあきらめるべきではない。