たけのこ感謝祭、個人的には空振り三振

毎年この時期、金沢市寺町の「妙福寺」というお寺で「たけのこ感謝祭」が催されます。
今年は本日4月10日の開催であり、私は卸売市場の代表として行ってまいりました。

たけのこ感謝祭は、江戸時代の加賀藩士・岡本右太夫(うだゆう)のお墓があるお寺です。
彼は明和3年(1766年)、孟宗竹を江戸から初めて金沢に移植しました。
この時は根付かずに失敗に終わったそうですが、明和7年(1770年)に再び江戸から持ち帰ったものが無事に繁殖し、その後県内各地に移植されてたけのこが産地化しました。
これにより、岡本右太夫は石川県におけるたけのこ生産の元祖と敬われ、その遺徳を偲び、「たけのこ感謝祭」が毎年行われるようになったのです。
今回がその53回目でした。

この会は石川県野菜園芸協会によって開催されており、石川県農林部、金沢市、小松市、白山市、津幡町の市町村(これらがたけのこ産地です)、各農協、そして市場関係者が参集し、お経を上げ、お墓参りをするという極めておごそかな会です。
「祭」とありますがそういう華やかさはありません。

さて、今年は新型コロナウイルスのため、例年より臨席者少数、時間も短縮されて行われました。
実は私は祝辞を述べるお役であり、ちゃんと原稿も用意してあったのですが、今回の簡略化により名前を呼ばれることはありませんでした(苦笑)。

昨年初めて臨席した際は、祝辞のことを知らずに即興のスピーチでごまかし、お数珠も忘れるという恥を晒したので、今年はリベンジとばかりに燃えていましたが、完全に空振りに終わりました。
コロナめ。
来年こそはリベンジです。

我ながら良い祝辞だったんですがね。
くやしいから、最後に書き記しておきます。
・・・と、それはどうでもよいこと。
せめて今年、地物のたけのこはいい年でありますように。
卸売市場もがんばります。

第53回たけのこ感謝祭の開催にあたり、一言、祝辞を述べさせていただきます。

まず始めに、地元のたけのこを愛する者として、心からの喜びを感じます。今年もたけのこの季節を迎えられました。堀りたてを生で、あるいはサッと湯がき、サシミとして食べられるのは地物の鮮度ならではの贅沢です。また、昆布と一緒に炊く北陸独特の食文化も、地物あってのものです。
ことに本年は、新型コロナウイルスで生活が破壊され、家に閉じこもりがちな風潮の中、たけのこが食卓に届き、家族でそれを囲めることは、人々にとって大きな安らぎとなるでしょう。心からお喜び申し上げます。

次に、流通にたずさわる者として、関係各位へ感謝の意を表します。生産者、農協関係者、市町村役場、他、ご尽力いただくすべての皆さま、誠にありがとうございます。
岡本右太夫翁が明和3年、1766年に江戸から初めて孟宗竹を導入されたことに始まり、以降、たくさんの心ある人々が「石川県産たけのこ」の歴史を紡いできてくださいました。そのご努力のおかげで今日があります。たけのこは、播種や定植といった一般野菜の栽培とは違いますが、山の手入れ・整理にはとても手間がかかり、収穫は重労働です。生産者の皆さまのご苦労に対し、感謝の念に堪えません。

最後に、卸売市場を代表して、集荷販売に対する決意を申し上げます。石川県の市場人(いちばじん)は、金沢・小松・白山・津幡、各地域の皆さまのご期待に応えるべく、全力を尽くして有利販売に努めます。
今年は一部産地を除き全国的に表年です。暖冬のため各産地とも太りが早く、切り上がりも例年より早いのではないかと言われています。石川県産はこれからピークを迎えますが、幸い非常に色が白く、きれいで、高品質であり、例年以上に有利販売ができるのではないかと思っております。これから、地元の消費者はもちろん、全国のマーケットに向け、石川県産たけのこを販売して参ります。

結びに、石川県野菜園芸協会の益々のご発展を祈念申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。

令和2年4月10日