使命感

また若手が一人、会社を辞めた。
今回のケースは、会社に不満があったというよりも、この仕事が自分に向いていないという思いが一番の要因だった。

私はこの会社で働いている。
この仕事が自分に向いているのかどうか。
どちらかといえば向いていないと思う。
しかし、自分はここで頑張り続けようと思っている。
それはなぜか。
もうここでやるしかないからか。年齢的にも現実的にも。
それなりの地位をもらい、このまま食うには困らない人生を送れるからか。

もしそうならば、その地位やら金銭やらを保証できない以上、新しい人材を熱っぽく説得し勧誘することは悪だ。
斜陽産業と呼ばれる業界であって、実際に給与水準は高くない。

給料安い、休み少ない、肉体も時にしんどい、
それでも一所懸命仕事に従事している社員がたくさんいる。
やり方が正しくないように思える人もたくさんいる。
が、基本的にはみな純朴で真面目だ。
そもそもカネ儲け主義のみの人間はここに来ること自体ありえない。

この業界、この会社で働く人々に一番必要なのは使命感だ。 
成人の年齢に達し、体が成熟したから大人なのではなく、使命感で仕事をする人間が大人だ。
仕事を通じて社会の役に立ち、人のために尽くすことが人間の価値だ。 

それを感じさせられなかったから若手は辞めた。
私の力の無さであり、失敗であり、怠慢だった。
今の立場でもこの思いを伝えて良いものか。
間違ったメッセージではなくとも、あえて言ってもいいかどうか逡巡する。
そのメッセージを発することにおける同士がいないからだ。

しかし、残された時間は多くはない。
孤独な一歩になろうとも踏み出すべきだ。
社員一人一人に使命を与える。
それが私の使命ならば、そうすべきなのだ。