「商興特報」にはいい話がちょくちょく掲載されるのであなどれない。
「商興特報」は、どこどこの会社が潰れた、債券はこんなんだ、といった生々しい情報の冊子だから、人生訓だの感性の妙だのとは無縁なようだが、とんでもない。
そんな世界に身を置く者こそ、人の情や生きる意味に精通していなければならないという哲学があるのだろう。
ここの編集者にお会いしたいものだ。
さて、今回は2020年6月23日号。
童話作家アンデルセンのお話である。
アンデルセンは貧しい靴職人の家に生まれ、父の死を受けてコペンハーゲンへ。
歌が得意で、オペラ歌手を目指すが、声をつぶしてしまう。
その身を嘆き一時絶望するが、ある詩人と出会い、文学への道を志す。
後に彼をこう言った。
「一見この上なく大きく思われた不幸の中に、実は向上の一段落が横たわっていたのである」(大畑末吉訳『アンデルセン自伝』岩波文庫)
自分の夢を追い、それに向かって努力することは人間が持つ最も尊い美徳であるが、すべて自分の思い通りに事が運ぶとは限らない。
いやむしろ、夢破れ、挫折することの方が多いのが人生というものである。
その時、新しい道を見出し、やがて人生に光を照らすことができるかどうか。
長い道のりの後に自分の人生を全うすることができたと実感できるかどうか。
壁にぶつかったとき、どう前向きに捉えていくか。
悩みや困難に振り回されるのではなく、積極的に意味づけし、前進と向上のチャンスに変えていくことができるかどうか。
大変な状況であるほど、それを乗り越えることによって、多くの人を勇気づける人間になることができる。
今いる時分の場所を正面から受け止めて、未来に向かってドラマを綴っていく。
大変、勇気づけられるコラムであった。
(ほぼ引用ながら、ところどころ自分の言葉に書き換えました。)