考察 自己買受

卸売市場法が改正になって、可能となったことの一つに「自己買受」があります。

可能と言っても、法律で「自己買受ができる」という文言が挿入されたわけではなく、旧法第40条「卸売業者は(中略)卸売の相手方として(中略)買い受けてはならない」という条文が削除されただけであり、禁止が取れたから解釈上許されるということです。

この法律改正の何が重要かというと、委託販売(=販売価格はその卸売会社の努力によって決められる)でありながら、実際は産地からの指値(=この値段以上で売れという産地の価格条件)の縛りを受けてきた卸売会社が、事故損形式であれ買付形式であれ、後々、お役所から追徴課税を受けたり、違法の指摘を受けたりしたその苦しい歴史に終止符を打ち、公明正大な経理処理をできるようになることを意味します。

これは当事者としては大きなことです。
産地再生産価格を支えられるのは実需者ではなく、卸売市場の需給調整機能あってのものという矜持はあるものの、世間一般に認められたものではなく、むしろ市場流通あるがゆえに物の値段は高くなるという誤った認識がまかり通ってきました。

自己買受が正当化されることで物の値段が変わるわけではありませんが、卸売会社は今までよりも産地にも実需者にもきちんとモノが言えるようになると思います。

ただし、クリアすべきことはまだ残っています。
税務署がOKかどうか、誰も保証してくれていません。
農林水産省は問題ないので自己買受方法に変更したが、あとから税務署にそれは不適切ですと言われた、では元も子もありません。
本来は農林水産省と国税庁で調整をしていただきたいところですが、そういう動きは今のところないようです。

今想定されている処理は以下の通りです。
産地から、委託での出荷ながら指値の条件があり、卸売会社としては今後の取引継続の必要性から、これを了承しての販売に努力しましたが、実勢価格との乖離があって指値通りには売れず、卸売会社は自己買受によって自社に指値での販売をします。
つまり、荷受け会社たる卸売会社(A)が、買受転売業者たる卸売会社(B)に販売します。
その後、Bは、実需者たる仲卸・売買参加者・その他買受人に対して実勢価格で販売をします。
その際、①「A⇒B」と②「B⇒実需者」という2つの販売が発生しますが、AとBは同一会社なので、普通に計上してしまっては売上が二重になってしまいます。
なので、①と②は相殺しなければいけません。
通常は①>②なので、販売実績としては①が残るということでしょうか。

細かい点はまだ詰め切れません。
具体的なことは誰も指南してくれないので、実際の運営はまだ先になりそうです。
これは全国の卸売会社共通の問題ですので、業界で取り組むべきことと思います。