商業界が破綻していた

(株)商業界が4月に破綻したことを今になって知った。

同社が発刊していたスーパーマーケット専門誌、月刊「食品商業」を会社で購読していた。
調べたいことがあって書棚を見たが4月号以降がない。
どこに行ったか周りに聞いても「さぁ?」と誰もわからない。
総務部に確認させたところ4月1日事業を停止、4月2日裁判所から破産開始決定を受けたことがようやくわかった。

あまりにも無知。恥ずかしい限りだ。
半年間もまったく気付かずとは、どうなっているのだ>わし。

雑誌は商業界との直接通販であり、一年分を払い込み済みだった。
つまり、4月号以降は支払い済みの未納品ということになる(細かい話)。

さて、自虐ネタはこれくらいにしておく。

「商業界」は1948年(昭和23年)創業の、小売業専門誌を発行する出版社であった。
初代主幹は「昭和の石田梅岩」と呼ばれた倉本長治(くらもとちょうじ)。
出版以外に「商業界ゼミナール」という経営者向け研修会を全国展開した。

私は一度だけ、2007年にゼミナールに参加した
当時まだお元気だった三崎ストアー・三崎登志晴会長が「丸果からも誰か参加しなさい。勉強になるから」とご案内をいただき、会社代表として私と中西さん(当時二人とも取締役部長)が参加した。
それが商業界と関わった初めての機会だった。

ゼミナールは一泊二日で、講演が目白押し。
夜の夜中までプログラムが用意され、初めて出会う人たちと雑魚寝した。
いやはや、商業の世界で勝ち抜いている人びとというのはなんともパワフルだ、と舌を巻いた。
特に、博多一風堂創業者の河原成美氏の講演、地元「芝寿し」の親子三代が講師を務めた分科会が印象深い。

ゼミナールを終えて、すぐに倉本長治著の書籍を求めた。
氏が唱えた「商売十訓」には現代にも生きる教訓がたくさんある。
「損得より先に善悪を考えよう」
「愛と真実で適正利潤を確保せよ」
「欠損は社会の為にも不善と悟れ」

儲けるという行為を真正面から正義と捉えているのが意義深い。
適正な利潤のない商売はダメなのだ。
商売する者に勇気と覚悟を与えてくれる。

私はちょっとかじっただけだ。
「商業界」についてあれこれ言うのはおこがましい。
実際は、それほどまでに今の出版業界が厳しい、ということなのだろう。
地元の金沢倶楽部の破綻もしかりだ。
ただ、こういう商売道の先生的存在が破綻してしまうのは何とも残念に思う。
商業界の教えが時代遅れとなった、というわけではあるまい。
だが、そういう印象を与えてしまいかねない。

商売哲学で変わるべきことはあるか。
不変の真理は何か。
商業界破綻は、経営者にその問いを否応なく突きつけるのだ。