顧客争奪と男女関係

卸売市場で青果物を集荷販売するうちのような卸売会社は、「絶対に潰れない会社」と言う人がいるが、とんでもないことだ。
市場を通らない流通が増えている上、市場同志の競争も激しい。
現に卸売会社で破綻した企業は全国にたくさんある。

民間の卸売会社である以上、商品を集荷(仕入)して、顧客に販売し、その差益で成り立っている。
商売で勝つか負けるかのシンプルな世界だ。
従って、ある小売店が、昨日まではうちの市場から買ってくれていたのに、明日から他所の市場に移る、といったことは日常茶飯事であるし、当然その逆もある。

顧客の争奪は、点でとらえれば、常にコロコロ変わり得る。
例えばきゅうりがこちらでは1本50円なのに隣が1本30円で売っていれば負けてしまう。
ただ、面や時間軸でとらえれば、そう簡単に変わるものでもない。
買う側からすれば、仕入先が変わることは基本、面倒であるからだ。

男女関係に例えていうと、仲のいい夫婦の間にいくら別の者が入り込もうとしても、離婚させて自分が取って代わることはできない。
せいぜいがこっそり、たまに密会して浮気するぐらいのものだ。
(商売上では単発のスポット提案にあたる。)

商売上は一夫多妻(一妻多夫)がぜんぜん認められているわけである。
離婚させて自分が正規の夫(妻)に居座るには、仲むつまじい夫婦ではなく、仲が怪しくなったカップルを狙うのがセオリーである。

翻れば、自分は自分の結婚相手を十分に満足させているかに注意を払っていなければ逆に奪われてしまう危険がある。
既存の結婚相手(顧客)との関係はいつまでも続く、と人は勝手に思い込みがち。
しかしまったくあてにならないことだ。

顧客との取引きや争奪については、自分の商品力ばかりでなく、そういう企業間の関係性にアンテナを張り巡らせておかないといけない。