桂泉会10周年記念演奏会
長唄「桂泉会」の10周年記念演奏会が開催された。
会主・杵屋君桂(きねや きみかつら)さんとそのお弟子さんが今日までの研鑽を披露する場だ。
実は本日の開催は、大いなる困難を乗り越えてのものだった。
10周年の節目として「一生で最初で最後(君桂さんご本人の談)」の大きな会にしたいという思いから、準備は2年も前から始まっていた。
当初は3月8日、県立美術館大ホールで やるはずだった。
ところが、昨年4月、君桂さんは自宅の玄関前で滑って転倒し、右手を骨折してしまう。
もちろん治療中は三味線は弾けない。
ご高齢の域にも入り、骨がくっつくのは順調ではなかった。
その後も長期のリハビリが必要となった。
さらにその間、自分のお弟子さんたちに稽古をつけてあげることもできない。
何よりそれが辛そうだった。
しかし、なんとか予定通り開催しようと2月までは頑張ってこられた。
そこへきての新型コロナウイルスである。
3月8日の演奏会が中止となった、と私が聞いたのは3月1日だった。
本当に無念だったろう。
今ですらコロナウイルス終息のメドは立っていない。
半年前はさらに闇の中だった。
延期ではなく中止、というイメージを私は持った。
ところが、数か月して、11月1日にやる、と言う。
しかも演目・出演者も全く変わらずだ。驚いた。
場所は料亭「金城楼」に変わることになったが、9月になって「金沢歌劇座」に変更と聞いてまた驚いた。
歌劇座は2000人から収容できる金沢でも有数の大ホールである。
金城楼だと密になるからという理由だった。
こうして、普通なら諦めそうなところを不撓不屈の精神で開催にこぎつけた。
終わってみると、歌劇座にして本当に正解だった。
確かに桂泉会を開くには広すぎる。
しかし、ホールに響き渡る音色は格別で、プロの舞台スタッフがサポートする照明等もとても格式高いものだった。
今回は、杵屋君桂さんとそのお弟子さんたちのみならず、錚々たるメンバーが賛助出演されている。
舞踊:藤間信乃輔
唄:杵屋君三郎、塩原庭村(杵屋三七郎改め)、杵屋喜太郎
三味線:杵屋新右衛門、杵屋彌四郎、杵屋彌太郎
囃子:望月朴清、望月太左衛、望月太満、望月太満衛
笛:中川善雄
素人衆にとって、この中で演奏できるのは分不相応はもちろんだが幸せという他ない。
そして、実際に各演目を聞いて心より堪能した。
囃子が入ると、長唄というのはかくも膨らむものか。
妻は今まで、長唄はどこがいいかわからないと言っていたが、今回ばかりは「聞き入ってしまった。日本の伝統芸能の素晴らしさがよくわかった」と感激していた。
杵屋君桂さんの桂泉会10周年記念演奏会の大成功を心より祝福します。
おめでとうございます。
ご苦労多かったでしょう。
諦めず私たちにも大きな感動を分けていただいたことに心から感謝します。