今年11月から、石川県産ズワイガニにまた一つブランドが加わる。
「加能ガニ金沢」。
金沢甘えびに続く金沢港の水産物ブランド第二弾である。
金沢市と石川県漁協で構成する「金沢市水産物ブランド化推進協議会」は、金沢港で水揚げされるもので甲羅幅11㎝以上の雄を「加能ガニ金沢」とし、8㎝以上の雌は「金沢香箱」とする。
ともに脚がすべてそろった傷のないものに限るとのこと。
せりは石川県漁協の「かなざわ総合市場」に限定される。
石川県で水揚げされたズワイガニには「加能ガニ」というブランド名が付いている。
加賀の「加」+能登の「能」だ。
この名が付いたのは2006年だ。
しかし、この名前は当初から一部で不評だった。
「加能(かのう)」という言葉に馴染みがない。
同じズワイである越前ガニ、松葉ガニと比べて、知名度の低さを指摘され続けた。
新ブランド名は知名度不足の打開を狙って「金沢」をつけ足したものだ。
県内の統一名称「加能」を無視するわけにもいかず、後ろに「金沢」をつけることにしたらしい。
ホントのホントは、「金沢ガニ」という名前にしたかったのだろうか。
知名度が上がるには、その名で呼ばれることがごく普通にならなければならない。
「かのうがに」が、「かのうがにかなざわ」と「かなざわ」までちゃんとつけて呼ばれることが当たり前になるということだ。
「スマホ」のように、略語が一般化するのはわかるが、長ったらしくなって有名になるケースはレアだ。
メスのズワイの「香箱」はもっとややこしい。
金沢港で水揚げされる香箱ガニは、「かないわ香箱」というブランド名がすでにある。
今季から「かないわ香箱」「金沢香箱」が両立することになる。
二つはどう違うのか。
新聞によると、水揚げした船の所属が石川県漁業協同組合(JFいしかわ)の金沢支所に属する場合は「金沢香箱」、金沢港支所に属するならば「かないわ香箱」になるとある。
こうなると外の人間には“わからん世界”に突入だ。
もちろん、各ブランドが好調に販売されるようになればいい。
一つ心配なのは、この度のブランド誕生が「かなざわ総合市場」と「金沢市農林水産局」で決められ、つい数日前に明らかになったという点である。
流通、特に金沢市中央卸売市場水産部が入っていない。
ブランドというものは、生産・流通・行政・消費者・報道関係など、ありとあらゆる人が関わって成功するものだ。
加賀野菜がその典型である。
ブランド力向上のため、これからは流通の人間も大きく巻き込んだうえでのムーブメントになってもらいたい。