NHK連続テレビ小説「エール」はとてもまじめに番組作りをしている。
戦争シーンを凄惨に描き、主人公を自我喪失に追い込む。
そのどん底から復活し、戦後の人々を希望の光で照らす名曲の数々を創り上げていくことが本作の醍醐味だ。
特に「長崎の鐘」、「栄冠は君に輝く」にまつわる1週1曲の放送は感動的であった。
今流行りの言葉で言えば、この2話は“神回“と言っていい内容だったと思う。
「栄冠は君に輝く」では作詞家のプロフィールが数秒映し出される。
住所が「石川県根上」と書かれているのでおやっと思い、調べてみた。
すると、この歌には知る人ぞ知るエピソードがあることを知った。
実際に作詞したのは、加賀大介氏。
石川県根上町(現・能美市)の人で、“加賀”ペンネームであり、石川県の旧国名からとっている。
彼は球児であったが、16歳の時に試合中の怪我で骨髄炎にかかり、右足を切断。
このため野球を断念せざる得なかった。
「栄冠は君に輝く」の歌詞は、自身は野球をできなくなった加賀大介氏の球児に対する特別な思い入れがある。
そしてこの加賀大介氏と不思議な縁で結ばれるのがあの松井秀喜である。
同じ石川県能美郡根上町出身の出身。
加賀大介氏の死からほぼ1年後に松井が生まれている。
このため、松井秀喜は、加賀大介の生まれ変わりなのではないかと言われている。
また、松井が通った浜小学校の正門前に加賀大介の自宅があった。
加賀大介氏の長女、新川淑恵氏は小学校教師になり、後にこの浜小学校の校長になっている。
この逸話は美しい。
この歌詞も美しい。
雲は湧き 光あふれて
天高く 純白の球 今日ぞ飛ぶ
若人よ いざ
まなじりは 歓呼に答え
いさぎよし 微笑む希望
ああ 栄冠は君に輝く
風を打ち 大地を蹴りて
悔ゆるなき 白熱の力ぞ技ぞ
若人よ いざ
一球に 一打に賭けて
青春の 讃歌を綴れ
ああ 栄冠は 君に輝く
空を切る 球の命に
通うもの 美しく匂える健康
若人よ いざ
緑濃き 棕櫚(しゅろ)の葉かざす
感激を 目蓋(まぶた)に描け
ああ 栄冠は 君に輝く
このエピソードのおかげで、「エール」を「古関裕而」を「栄冠は君に輝く」をとても身近に感じることができた。