ともすれば不謹慎だと怒られる話かもしれない。
が、待ち望んでいた寒波がようやくやって来た。
一発、雪でもドカンとくればさらにありがたい。
11月以降、台風など自然災害がほとんどなかったおかげで、今年の秋冬野菜は露地作を中心に全体的に大豊作となった。
豊作は良いこと?
いや、現代はそうとも言えない。
野菜の相場が落ちすぎるのだ。
農家にすれば、下手すれば輸送賃も出なくなる。
段ボール代も出なくなる。
作れば作るほど、出せば出すほど損をする状況に陥る。
流通業も損をする。
昔は値が暴落すればそれなりに引き受け手があった。
たとえば漬物屋がここぞとばかりに安値で大量に買う。
八百屋でも安くさばいた。
「需要>供給」の構造ならばそれが効いて、安いなりに量が動いた。
しかし、現代では売れる量は決まっている。
人々は必要な分だけ買えればよい。
必要を超える部分は「ただでも」要らない。
いやいや、11月と12月前半は家庭菜園も豊作で、一般市民が趣味で作った野菜が、成りすぎたために自家消費だけでは余りまくり、近隣の家々同士でただでやり取りしていたのだ。
ただで手に入るものをお金を出して買うことはない。
だから流通段階で売れ残り、滞留する。
滞留して商品が傷み、最悪廃棄になれば、そのロスは流通業の負担となる。
以前も書いたが、夏は暑く、冬は寒いことが日本の食においては「あるべき姿」なのだ。
夏は暑いからこそ冷たいものを体が欲し、トマトやレタスなどサラダ商材がメインとなる。
冬は寒いからこそ鍋物料理が食べたくなり、ダイコンや白菜、ネギなど加熱商材がよく売れるようになる。
そのサイクルが狂うと途端に需給バランスがおかしくなって値段が乱高下する。
特に「需要<供給」が長引くと利益を確保できない販売環境が慢性化する。
今も昔もこの業界は「お天気頼み」から抜け出せない体質がある。
「だから市場流通はダメなのだ」と厳しく言う人もいるが、ある程度は致し方ないことなのである。
だから、待ちに待った寒波到来である。
昨晩から雪が降った。
金沢はうっすらと白くなってすぐに消えたが、能登では20センチ積もった。
秋冬野菜の需要が高まるのはもちろんだが、収穫前の農産物の生育が鈍る。
雪が積もれば、収穫作業も滞る。
必然的に流通量が減って、供給過多が解消される。
大雪・豪雪は困りものだが、キュンと冷えてうっすら積もる程度の雪景色が一番よろしい。
そんな都合の良い具合は望むべくもないが、近年、異常気象の連続で翻弄され続ける中、時々はこちらに有りがたい環境がやってきてもバチは当たらないと思うのだが。