父母の好き嫌い

親と同居し12年になる。
1階は父母、2階は私と妻と子ども2人が居住し、同居とはいえ別々に食事を作っていた。
4年前に母が体が不自由になってからは妻が2階の台所で6人分の食事を作るようになり今日に到る。

そしてほんの1年ほど前から私も暇を見つけて台所に立つようになった。
青果卸売業なのに野菜を料理できないようではまずいと遅まきながら思い立ったのが理由その一。
妻も毎日の料理は大変だし、夜いないときもあるので、少しでも手伝えればというのが理由その二だ。

料理を少しやるようになって初めてわかったことがある。
父母はどちらも好き嫌いが多い。
父の偏食はけっこう知っていたが、母もかなりのものだ。

父の好きな物
・さしみ(さわら、赤身、甘エビ)
・たまねぎ
・うどん
・越山の豌豆もち

父が嫌いな物
・鶏肉
・サバ
・サーモン
・しいたけ
・ピーマン
・そば
・一風変わったもの、見たことがないもの全般
・ケーキはシュークリームしか食べない

母が好きな物
・貝のさしみ
・グラタン

母が嫌いな物
・かぼちゃ
・たまねぎ
・うどん

妻がよく「あー今晩何を作るか全然思いつかない、困ったなぁ…」と愚痴っていたのがよくわかる。
特に父にこれだけ嫌いなものが多いと、献立がかなり限定されるのだ。
母はまだマシだが、父の好物であるタマネギとうどんが嫌い!というのが問題だ。
昼飯は父向けにうどん、母向けにそばかラーメンと別のものを作るはめになることも珍しくない。
にっくき父の好物だから嫌いになったのでは?と勘ぐりたくなる(笑)。

母は何にでもチャレンジするが、父は新しいものに見ると箸をつけようともしない。
食への探求心ゼロ。
おそらく昼飯は365日毎日うどんでも、毎度うまいうまいと喜んで食べるに違いない。
それはそれで幸せかもしれない。

わがまま言わずに出されたものを食え!
とやってしまえばそんなものだが、高齢の父母に対し嫌いとわかっているものを無理に食べさせるのも忍びない。

この親の子にして、私はなぜか好き嫌いがほとんどない。
昔は納豆、グリーンピース、酒粕など苦手なものがあったが、意識的に、或はいつの間にか克服した。
好き嫌いが多いというのは食を楽しむ上ではとても損なことである。

父91歳、母83歳。
健康かどうかは怪しいが、長寿である。
特に父を見ていると、食生活は栄養のバランスが重要、という常識を疑いたくなる。
一つはっきり言えるのは、偏食は寿命を縮めることはないということだ。
だから、人生、せいぜい好きなものだけを食べて過ごせばいい。