2021年4月1日から小売業や飲食業で総額表示が義務付けられる。
いわゆる“内税”の表示義務だ。
かつて消費税5%だった2004年から約10年間、総額表示は義務だった。
しかし税率が14年4月に8%、19年10月に10%へ段階的に引き上げられるにおよび、消費税転嫁対策特別措置法で外税表示も認められるようになった。
が、その特例期限が2021年3月で切れるというわけだ。
私は、総額表示には反対である。
外税制度(税抜き価格表示)が正しいあり方だと思う。
ダイレクトな話だが、日々の商いで卸売業者は小売業者と極めて厳しい価格交渉をしている。
総額表示になることで、小売業者の卸売会社に対する価格引き下げ要求が強くなる恐れがある。
例えば、今まで店頭価格「98円(税抜)+消費税」と表示していた商品が総額表示では「106円(税込」となるため、お客にとっては値上げと錯覚する。
すると売上が鈍るので、小売はなんとか税込98円で売りたいと思うようになる。
98円(税込)=91円(税抜)+8%(消費税)なので、同じ商品ならば実質7円の値下げだ。
税込98円で売る道は二つだ。
小売が自分の利益を削るか、仕入れ値を下げさせるか。
どちらかが(或は折半で?)この差額7円を負担しなければならなくなる。
表示の義務化だけでこんなバカなリスクが生じる。
値引きせずに適正に表示すればいいだけではないか、という綺麗ごとの理屈はある。
だがもうすでにユニクロなどは全商品を9%値下げし、表面上の価格据え置きを決定している。
薄利多売の青果物で8%の値下げをすればその瞬間に赤である。
価格競争の実態は生易しいものではないのだ。
そもそもお役所がいうところの総額表示義務化の根拠がわからない。
根拠その1)消費者は、いくら支払えば購入できるのか、値札や広告を一目見ただけで簡単にわかるし、店舗間の価格の比較も容易になる。
⇒消費者はもっと賢い。食品等8%、その他10%乗せるだけの計算だ。支払いにシビアな消費者は簡単にこなす。
根拠2)税抜き価格表示によって生じていた煩わしさが解消され、消費税に対する国民の理解を深めることにもつながる。
⇒逆ではないか。税込み表示で煩わしさが増える。正味の価格がわかりにくくなる。商品の代金は代金、税は税と区別し支払う習慣が、国民の税金に対する理解を深めるのではないか。