農業衰退は本当か
日本の農業は衰退の一途。担い手は減り続け、耕作放棄地は増え続ける。食料自給率は回復のめどまったくなし。ここらへんが農業の常識的な現状認識だ。しかし最近、“それは我々が知らないだけで、実は担い手はちゃんといるのではないか”と思うようになった。
株式会社栄農人(エナジー)
その一例が株式会社栄農人の存在である。「栄農人」と書いて「エナジー」と読む。令和2年7月期で自社農場が110ha、年商26億円の会社だ。グローバルギャップの認証を取り、長野や山梨を中心に野菜・果実を幅広く生産している。自社農場だけでなく、多数の委託農家と契約もしている。
割安株のような生産法人
先日、栄農人の柳澤孝一社長とお話する機会を得た。今期はさらに実績を伸ばし、年商35億円に届きそうとのことだ。私は“恥ずかしながら、御社の存在をまったく存じなかった”と言うと“当然です、今まであまり表に出ないようにしていたので”とさらりとおっしゃった。規模はでかいが、自社で生産した青果物を粛々と直接販売し、市場流通は東京・長野の卸売会社とほんの少し取り引きがあるだけとのことだ。商品サンプルを拝見したが、包装フィルムのごく片隅に小さなロゴマークを付してあるだけで、会社の名前やPR文句はまったくなし。自己主張の極めて控えめな商品だった。しかし実力はある。知名度が低くてもこれだけ実績を伸ばしているのはすごいことだ。株の世界に例えれば割安株だ。まだまだ成長する可能性は大きい。
市場人はもっと目を凝らせ
ほー、こういう生産法人があったのか、と改めて驚き感心し恥じ入った次第だ。我々市場人は、やれ産地がない、売り先がない、市場外流通にせめられっぱなしだと愚痴る前に、もっと世の中に目を凝らさなければならない。知らないところに宝はいくらでも埋まっているのだ、きっと。余談だが、柳澤社長はあの伝説の格闘技イベント「PRIDE」や「ハッスル」の運営を手掛けたユニークな経歴を持つ。女子プロレス団体のスタッフをやった私としては、勝手に親近感を覚えている。