近江町市場三百年史:書評

我がルーツ、近江町市場

 私のルーツは近江町市場である。曽祖父・岡嶋勝二郎が八百屋を始め、祖父・岡嶋友作が店を継いで「岡嶋友作青果店」を営んだ(らしい)。友作は卸売業の会社「石川県青果」を近江町の向かい側にあった住吉市場内に立ち上げ、それが後の丸果につながる。岡嶋家は近江町市場内の青草町24番地に住んでおり、私も3つまで住んでいた。

本の概要

 近江町市場は開設されて今年でなんと300年となる。それを記念して本年4月に発刊されたのが本書である。貴重な歴史的資料や記録、写真、インタビューなどから構成されている。近江町市場商店街振興組合が発行、北國新聞社から税込み3300円で発売された。
 執筆は石川県の地域の歴史研究家である宇佐美孝氏と、金沢中央信用組合参与で近江町研究家である石田順一氏のお二人による。宇佐美氏のことは存じ上げないが、石田氏は何度か講演を拝聴し、何度もお話させていただいた。本当に近江町への愛に溢れる方だ。

石田順一氏の近江町への愛

 巻末に「編集を終えて」と題した石田氏のあとがきがある。「…が探し出されたときなど、もう興奮するやら鳥肌が立つやらの発見、発掘がありました。」「市場開場300年より100年以上もさかのぼる史跡からは歴史のロマンを感じます。」「編集作業を終えたいま、近江町市場の一ファンだった私は、市場に惚れ直し、市場を誇りに思い、大ファンになりました。」

父へのインタビュー

 開けばわかる。詳しい資料が詰め込まれた堂々たる資料本でもあり、膨大な記述を添えて解説を施した史書でもあり、現在から未来に向けた示唆を込めた本でもある。
 本書には平成28年に取材を受けた私の父・岡嶋忠雄のインタビューも掲載されている。これも石田さんがしてくださったことだ。そしてつい先日、石田さんはわざわざ自宅までお越しになり、本が完成しましたと一冊置いていってくださった。なんと恐れ多くご丁寧なことだろう。本当に頭が下がる思いだ。

偉業を成し遂げるのは愛

 この本は石田氏の愛の結晶である。かくも近江町を愛し、時間と労をかけ、堂々たるものを完成された。偉業を成し遂げる原動力は愛だ。私としてはもう感謝しかない。自分の生誕の地の歴史がこれほど詳細な記録とともに後世に残る。なんとありがたいことではないか。

近江町市場の未来

 極めて個人的な思い入れとなるが、この本は父に代わって、この先ずっと大切に読み進め、大事な蔵書としたい。そして、近江町自体がこの先さらに発展し、400年記念を迎えられるように、関係者一丸となって頑張っていかなければならない。