プロレス本3冊
泉野図書館から3冊の本を借りた。
①力道山対木村政彦戦はなぜ喧嘩試合になったのか(2015年)
②私だけの「力道山伝説」(1995年)
③プロレス発『加賀☆能登』行きエキスプレス(1991年)
著者は3冊とも石田順一氏である。
力道山評論家
昨日のブログで書いた書評:「近江町市場三百年史」の編集者である石田順一氏である。彼はここ石川県では知る人ぞ知る「力道山史研究家」である。力道山史研究家。この肩書きの方は、日本に何人いるのだろうか。もしかしたら氏お一人だけかもしれない。石田氏は長年、金沢中央信用組合の重役というお立場であり現在は参与だ。本業の傍ら、近江町市場の歴史を研究をはじめ地域の歴史、民俗芸能など多方面での調査・執筆活動をされてきた。中でも一番力が入っていたのが日本のプロレス史、特に力道山の研究である。
プロレスショップのオーナー
氏は小学校3年生の頃にテレビで見た力道山に多大なる影響を受ける。その2年後には力道山は死亡するので、氏が観戦したのはたった2年間だ。しかしその後もずっと忘れられず、力道山に関する読み物を集めまくった。その情熱が高じ、昭和60年4月にはプロレスショップ「プロレス屋」をオープンさせるに至る。小立野の自宅にだ。この場所は商業地でもなんでもない、ひと気の少ない裏通りである。石川県という地方の、へんぴなところにプロレスショップがあるという噂は、当時東京で女子プロレスの営業をやっていた私の耳にも入っていた。実家から近いなぁ、どこぞの物好きがやってんのかなぁと気にはなっていたが、ついに訪れる機会はなかった。
そのプロレス屋の店長さんが、あの近江町研究家で、本業は我が社にも関係深い金融機関である。この糸が結びついたのは実はほんの最近のことだ。つくづく人にはいろんな顔があるもので、どこでどう縁がつながってくるのかわからない。
ファンによる歴史書
本を読ませていただいた。敬服した。これは純粋に力道山ファンによる歴史書である。ファンのファン目線によるファンのための本だ。リンカーンのゲティスバーグ演説のプロレスファン版だ。
いわゆるプロレス本の多くは、業界人の執筆による。プロレスマスコミであったり、選手本人であったり。なので、あの試合の舞台裏はこうだった、といった裏話的な書物が多く、それが行き過ぎて(?)、昨今は誹謗中傷、暴露のオンパレードの様相を呈している。
しかし、石田氏の本はそれらとは一線を画する。当時の試合結果、新聞記事、雑誌等を丹念に丹念に拾っていく。全ては表に出た情報の集積である。そして、自らの推測めいた考えはほとんど書かない。それでも不思議だ。何十にもオブラート包まれたプロレス記事からは真相は伺い知れないと思いきや、なんとなくコトの真実が浮き出てくるような気がしてくるのだ。「力道山対木村政彦戦はなぜ喧嘩試合になったのか」では、その数年前に増田俊也の名著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」が出版され、大きな話題となっている。増田氏はプロのジャーナリストである。その超緻密な取材によってかなり裏の裏まで明かされた名著があるのに、石田氏はあくまでもファンの立場を貫く。ファンが知れる範囲の中で乾坤一擲のまとめあげをしている。この姿勢はプロレスファンの鏡と言って良い。
愛情が偉業を成す
昨日のブログを繰り返す。偉業を達成するのは、ひとえにそれに捧げられた愛の深さだ。この本を読んで学べるのは愛の力である。