首長のワクチン優先接種の問題点

今年はワクチン騒動

 今度はワクチン騒動だ。昨年はマスクがないとギャーギャー、今年はワクチンまだかでブータラである。まったく同じ構造で進歩がない。政府の後手後手感は否定できないが、マスコミの無責任なお騒がせぶりも相変わらずだ。ワクチンネタはこの先、手を変え品を変えあと数ヶ月続くだろう。そして今話題の中心はは、首長の優先接種スキャンダルである。

首長のワクチン優先接種問題

 地方公共団体の首長何人かが、優先接種で半端に余ったワクチンを打った。中には40代の首長もいた。首長だからといって優先されてよいのか。不公平ではないか。ましてや65歳以下は完全に職権乱用だろう。…批判の内容はだいたいそんなところ。わかりやすい話ではあるが、実はいくつか要素がごっちゃに入り込んでいる。①首長、②余ったワクチン、③高齢者でない。この3点を整理して考える必要がある。

①首長は優先されるべきか

 優先されるべきだ。優先どころでなく、誰を差し置いてもイの一番に受けてくれ。地域を取り仕切る一番の重要人物である。真っ先に接種するのは当然だ。

②余ったワクチン

 余ったから使ったというのがこすっからしい印象になった。役人の発想は「余ってしまった。どうしよう。捨てるのも非難される。誰かに使わねば。まずは首長がいいのでは」という短絡的なものだ。おそらく当の首長でこれを喜んで受け入れたのは少数ではなかろうか。「いいのか、わしで?」というのが普通の人間の感覚だろう。「いいのです。いや、むしろ首長が先陣を切ってくれないと、他の者に回せません」と小役人が説得したシーンが目に浮かぶ。余ったものなど使わず、ワクチンが届いたその日に、一番目のワクチンを堂々と使い、堂々とテレビで公開すればよかったのである。

③高齢者でない

 若い首長こそ、届いたその日にイの一番にテレビカメラの前で打つべきだったのだ。医療従事者にさえ先んじて。「私は自分に課せられた使命と責任を考え、本県で一番目に打つことを理解していただきたい。この後は役所が定めたやり方にしたがって、市民は順番に接種していただく」と宣言すればかっこよかった。

人間社会全体としての優先順位

 医療従事者と高齢者を優先したのは、市民の命を守ることを前提とした目線で、これはこれで一つの考え方である。私の価値観では、要職にある者も優先されてよく、高額納税者も優先されてよい。政治・経済をひっくるめての人間社会という目線だ。優先順位はどうあるべきか、その議論を交わすのがマスコミの役割であるのに、人を貶めるネタ探しばかりに奔走しているような気がする。声が大きい人の意見ばかりがやかましく聞こえる。難儀な世の中だ。