富山市場の再整備
金沢市中央卸売市場の再整備計画が一応検討中ではあるが、具体化にはまだまだ時間がかかりそうな情勢だ。それに比べてお隣富山は進行が早い。3年後には新市場がオープンする予定だ。本日、富山市場の再整備に詳しい方から内容を伺った。
富山市場の敷地は現在37,000坪あり、金沢市場より広い。ただし青果・水産・花きの3部門が営業している。再整備の最大の特徴は、そのすべてを市場にリニューアルするのではなく、市場施設と商業施設に区分けする点にある。市場部分はコンパクトな流通拠点とし、商業部分はホームセンターやスーパーに入ってもらい、そこからの賃貸収入を得ていく試みだ。花きは営業は続けるものの再整備の対象とはしない。
PPP方式
開発手法は公民連携のPPP方式である。建物の所有者と土地の転借地者はリース会社となる。金融機関からリース会社か資金を調達する。市場関係者にダイレクトに融資するのは、金融機関が貸倒を恐れ嫌がるらしい。
市場施設:土地は富山市が民間開発業者に30年間貸す。建物は民間開発業者が建て、逆に市に30年貸す。よって行政は土地を貸す収入と建物に払う支出でほぼいってこいとなる。この手法は、行政の財政負担が少ないので富山市としては進めたい方式である。市場関係者(卸・仲卸)は従来通り富山市に使用料を払う。使用料はまだ全く未定だ。国庫補助金がどうなるかで大きく変わるが、開発費用を丸々転嫁するとすれば、3倍程度にはなってしまうらしい。
商業施設:土地は富山市が民間開発業者に30年間貸す(これは市場施設と同じ)。建物は民間開発業者が建てて民間企業(ホームセンターやスーパーなど)に貸す。
関係者による協議
具体的な検討は、「コンソーシアムメンバー」というチームを組織して討議する。多い時は毎日、少なくとも週に一度は寄り集まって議論する。どういう市場を目指すか、そのためにどんな規模・機能が必要となるか、だからどういう設備がいるか、という具合にドリルダウンする必要があり、ここを間違えると将来大変な目に合う。
再整備を考える上で重要なこと
金沢市中央卸売市場は、富山市公設地方卸売市場よりも取扱い規模が数倍大きく、しかし面積は狭いとあって、再整備には立体化が不可避である。立体化すれば建設費用が跳ね上がる。ここが一番の関門なのだが、具体的な話がなかなか出ないで困っている。物流にしてもストック系(土物など保管しながら販売するもの)と通過系(葉物などその日に売り切り出ていくもの)に分けてゾーニングする必要がある。適正な市場整備には相当量の事前調査が必要だ。優秀な物流コンサルの助力が必要となる。
新しい時代の市場流通は、従来とは違う発想がないと運用できない。そのキーワードが“共有”又は“シェアリング”だ。卸・仲卸がそれぞれに持ち場を確保するのでなく、空間と時間をシェアすること。場合によっては、青果と水産で売場を共有するような試みがあってもよい。また、市場全体で物流会社を立ち上げて共同配送を組織化するというのも新市場では必須機能となるのではないか。以上、課題は山積しているが、金沢市場も富山市場のスピード感を見倣って、検討ペースを早めていかなければいけない。