行政・市場・農協がタイアップしての生産者援護制度
今朝の北國新聞に「農産物の『奥能登直行便』販売額4年連続減」という記事が載った。「奥能登直行便」の正式な事業名は「顔の見える能登の食材市場流通事業」だ。市場関係者は略して「かおみえ」と呼んでいる。奥能登の小規模農家が収穫した農産物を金沢市場まで直行で運ぶ便を仕立て、せり販売をする。奥能登の零細農家の販路を確保する県の事業で、今年で12年になる。私は僭越ながらこの事業の協議会の副会長を仰せつかっている。開始から8年は右肩上がりで取扱い実績が増えたが、2017年からは減少に転じ、出荷農家数もピーク時よの7割になったという内容だ。
2016年までは実績向上
データは真実であり、記事に間違いはないと思う。ただ、この記事だけを見ると能登の農業の衰退ぶりばかりが印象に残るので少々説明が必要だ。出荷者数のピークは2014年度の301軒である。2020年度は219軒で約3割減だ。だが、販売金額実績は2016年がピークである。これは、農家が3割減ったというより、この事業をうまく利用する者とドロップアウトした者とに分かれたことを意味する。そして利用を積極的に行った組は、各自生産量を伸ばすことができた。だから総実績が伸びたのである。
意欲的な農家は本事業で大きく成長
しかし、その後伸び悩んだのは確かである。理由の一つには、生産者がこの事業の他に、農協の直売所を幅広く利用するようになったことが挙げられる。私の立場では、作ったものは全量市場に出してもらいたいが、これは生産者の自由裁量だ。本事業をうまく利用して作り手として成長し、市場出荷と直売所利用で、大きく所得を増やした農家はたくさんいる。また、ロマネスコやコールラビなど、馴染みの薄い珍しい野菜を意欲的に提供してくれたことで、金沢の八百屋を活気付けるのにも一役かった。この事業が果たしてきた意義は大きかったと自負している。
問題点とこれから
大きな問題は、ここ数年、新たな参入者が極めて少ないことだ。これこそが高齢化と過疎化、後継者不在のツケである。が、市場側からの参入呼びかけが足りない部分もあっただろう。大いに反省すべき点だ。
奥能登に後れを取ったが、数年前からは七尾を中心とする「中能登直行便」も始まった。なんといっても地場農産物の掘り起こしは当社の大きな課題である。やり直すべきところはやり直し、てこ入れするするべきところはてこ入れし、能登の農業生産を高めなければならない。