路上の伝説、ボンサイ柔術に敗れる
18年ぶりに格闘技の東京ドーム開催となった「RIZIN28」は、最後すべてをボンサイ柔術に持っていかれた。クレベル、サトシはともに母国ブラジルと同様に、日本への愛国意識を抱いている。しかし、朝倉未来失神一本負けの現実から感じるのは、日本の総合格闘技の強い敗北感であり、朝倉個人のライフスタイルの大きな挫折感である。
RIZINブームの危機
朝倉未来と朝倉海の兄弟サクセスロードは、RIZINの生命線だ。それが大きくつまずいた。朝倉未来は2戦前の齊藤裕にも敗れているが、今回の精神的ダメージは比較にならない。もし引退の道を選べば、日本中の格闘技熱が冷え込む可能性すらある。
RIZINはガラス細工のようなもの
敗戦はガチの世界だから仕方がない。スター選手が勝ち続ける保証はどこにもない。その世界が安定して人気を持続するには、人の層が常に厚くあらねばならない。特定の人気選手がこけても、新たなヒーローが次から次へと排出される厚み。その厚みを外国人選手で調達し成功を収めたのがPRIDEだったが、UFCの隆盛によって世界のトップは日本のリングに来なくなった。今のRIZINは格闘技愛の強いごく少数の人間が手塩にかけて育ててきた日本人選手のものだ。その実態は極めてもろい。象徴的存在である朝倉未来がここで挫折するようならば、ガラス細工はたやすく砕け散る。
頭が良いからこその成功と挫折
朝倉未来は頭が切れる。それ故にここまで上り詰めたとも言えるし、逆にそれ故にストップを食らう結果につながったとも言える。頭脳明晰ゆえにすべてが自己流なのだ。自己流のトレーニングで強くなり、自己流の生き方を披露してYOU
TUBEで人気を博した。一人の格闘家としては桁が違う莫大な収入を得て、別に格闘技で命を削らずとも食っていける状況を作った。だが、その人気は格闘技界の頂点に君臨した上でのものだ。今回の挫折で彼がこの世界から姿を消せば、名声も富も一炊の夢に終わってしまう。
朝倉未来、復活せよ
稀有な素質とタレント性を有する人間だ。このまま消えるのはもったいない。ぜひ復活を果たしてほしい。そのために、自己流を捨てよ。一流のトレーナーを付けよ。朝倉兄弟に欠けているのは堀口恭司におけるマイク・ブラウンだ。先達が積み重ねてきた技術と理論を受け入れよ。第三者から戦略を授かれ。まだ20代後半ではないか。現代のスポーツ界は選手のピークは30代である。老成するな。引退は10年早い。