金沢農業大学卒業生園地研修

農業大学支援チームの園地訪問

 金沢市で新たに就農しようとする人たちを教育し、支援するのが金沢農業大学である。その支援チームに僭越ながら私が入っており、この日、卒業生3名の就農実態を確認・指導する研修会が開かれた。私は栽培技術の面では素人である。何を作ればよいか、どの時期にどう出せばいい値がつくか、といった流通面・販売面でのアドバイザー役である。金沢市の農業はマスで見れば零細である。こういう就農支援が充実し、卒業生がその後も農業でしっかり生計を立てられるようになることは非常に重要だ。

規模の拡大には卸売市場がパートナー

 本日は3名の卒業生の園地に伺った。彼らはそれぞれ、栽培品目の一部は共撰(農協の部会に所属しグループの一員として出荷する形態)だが、それ以外は個人出荷(単一農家として出荷する形態)で市場ではなく直売所に出している。私としては市場に出す量を増やしてもらいたい。だがなかなかそうはならない。市場のほうが直売所に出すよりも高値で売れることが少ないからだ。では市場は農家の産物を不当に安く叩き売る搾取機関か?そうではない。信頼を得て、それなりのロットを安定的に出す出荷者にとっては、直売所よりも市場のほうが強力なパートナーとなる。農家として規模を拡大したいのならば断然市場出荷だ。販路は無限と言って良い。だが、そこまでのラインに到達しないでやめてしまう生産者がほとんどだ。市場への出荷当初は、少量単発的な出荷になりがちで、それだといい値がつかない。多くの個人出荷者は、その入口の安値世界しか味わわずに市場出荷を敬遠してしまう傾向にある。私はこれは、生産者にとっても、市場にとっても不幸なことだと思う。

金沢春菊の可能性

 本日の卒業生はエリア的には金沢中央農協の管轄下だ。金沢中央農協が力を入れたい品目に加賀野菜の「金沢春菊」がある。丸い葉が特徴で香りの良い品種だ。地域の独自性もある。需要もある。卒業生たちも作ってみたいという意欲は旺盛だった。しかし、ためらいもあった。理由は簡単。自分が作り、お隣も作り、あの人も作り、かの人も作り…となると、とたんに供給過剰になって値崩れを起こすのではないかと思うのだ。これが個人出荷だけの世界の悲しさだ。個人=点 の集合体だと、明日はどれだけ出るか、来週はどれだけ出るかが全くわからない。いつも未知な世界で、出してみないと量も価格もわからない。だから組織かし、計画し、前もって交渉をするのだ。そこに農協と市場流通の出番がある。

市場として支援したい

 私にとって今回が金沢農業大学のデビュー戦だった。前任者からおぼろげながら聞いていたが、ようやく実感することがあった。新しい担い手こを点を線に、線を面にして、組織化しなければならない。それが産地化だ。これからの卸売会社の役割は、共撰共販化を販売面から支援することだ。