卸売市場を通さない流通のことを「市場外流通」という。青果卸売業からみての市場外流通について、若手社員に講義した。以下はその覚書である。
市場外流通の4分類
市場外流通の形態をざっくり分類すると次の4つになる。
①JA直売所・道の駅
一番わかりやすい〝市場はずし〟であり、農協が店舗を構えて市民に販売する。メリットは自分で値付けができること。15%の手数料以外は自分の収益になるため、単価的には市場出荷より有利に見える。
②量販・スーパーへの直販
卸や仲卸を経由せず、生産者が自分の営業力で実需者と契約すること。個人農家、JA(直販部)、商社など、誰でもが商談可能。作るのも売るのもスマートにこなすいわゆる〝スーパー農家〟の活躍の場でもある。
③ネット通販系
物流手段は宅配なので、割高になるが、消費者にとってはとにかく簡便。高くついても時間と手間を省略したい市民は必ず一定数以上存在するため、この流通は今後も間違いなく伸長する。
④加工業者への流通
加工業者(メーカー)との契約栽培となることが多く、加工食品の拡大とともにニーズは増える。
市場外流通への対抗策
それぞれに市場側としての対応策はある。
①JA直売所・道の駅にばかり出す生産者に対しては、「規模拡大を考えるなら市場流通が絶対的なパートナーだ」ということを理解させること。規模拡大=全体収益の増加である。小口生産なら直売所が有利。だが大口ロットならば市場とのタイアップは必須である。
②量販・スーパーへの直販をうまくこなす生産者、商社は、基本的には止まらない。だが、中心等階級だけ契約先に流し、裾モノを市場に出すことは自分の首を絞めることにある。裾モノばかりが市場にあふれて相場が下落し、その結果、自分の次回契約でも価格は下方向圧力が強くなるからだ。
③「ネット通販=市場外流通」と決まったわけではない。要するに簡便さと時短を実現するツールがもてはやされる時代というだけ。品揃えでは圧倒的に市場流通に利があるので、市場がこの機能を武装すれば、問題転じて武器となる。
④加工への取り組みが薄いことは市場流通最大の反省点だ。とにかくこの50年間、加工方面へのアプローチ不足が顕著だ。カルビーなどに代表されるメーカーの産地囲い込みは確かに脅威であるが、市場が優良生産者を育てる役を担うことは両立できる。市場が加工業者を顧客とすることは双方にとってWIN-WINだ。やはりここもまた「加工=市場外」というレッテルをいつのまにか貼って信じてきた市場側の浅はかさがある。
最大の競合先は他市場
そもそも、市場流通にとって最大の競合相手は、実は市場外流通ではないということにどれだけの人が気づいているか。市場の敵は市場。つまり、市場間競争こそが一番苛烈なのである。市場経由率は60%だが、国内産青果物に限ってみると80%が市場流通だ、というのがそれを端的に証明している。市場外流通の拡大が自己の取り扱い減少の原因だ、というのはゴマカシというものである。仲卸の直荷引き、市場間競争に勝っている市場は取扱高を増やしている。つまり、市場外流通をあーだこーだという前に、まずは次のことに全力を尽くすべきだ。
①市場間競争を徹底的に分析し、提案力と営業力をもって顧客獲得を実現する
②加工業者へのアプローチを強化する
③ネット通販のような新しい販売形態に市場も乗り出す